はじめに
NHKの大河ドラマ『八重の桜』のヒロイン、山本八重は2度結婚している。最初の相手は洋学者の川崎尚之助で、川崎尚之助の妻と記載された史料はあっても、「川崎八重」の記述は見出せない。新島襄と再婚した1876年の時点でも「山本八重」と名乗っていただろう。「新島八重」と名乗るのは、1898年に明治民法が施行されたのちのことである(図1)。
源頼朝と結婚した政子が、鎌倉幕府の御台所となっても北条政子とよばれていたように、日本は明治までずっと夫婦別姓だった。明治民法で家制度の象徴である戸主権が認められて「妻は夫の家の氏を称すること」と明文化されるまでは、公家や武家の女性は結婚しようが離婚しようが実家の氏を名乗っていたのである。
夫婦別姓の賛否はともかく、制定された法律が不変であることはない。時とともに改定されている。この連載の第5回目に、知的財産権の特許、実用新案、意匠、商標の4種と著作権について基本を述べた。そのうち著作権と商標は新たに追加、見直される動きが今ある。国内で電子書籍市場が急速に広がり始めたのを受けて、出版業界が書籍に関する著作隣接権を求める動きを強めている。そして化粧品業界にとって大事なブランド、図2に示す商標には3つの機能がある。この法改正があるので紹介させていただく。
改正の経緯
第19回商標制度小委員会(平成20年6月)において「商標制度の見直しに係る検討課題について」審議が行われ、新しいタイプの商標について同委員会の下に、「新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ」(以下「新商標WG」)を設置することが決定された。
新商標WG(座長:土肥一史一橋大学大学院教授〈当時〉)は、5回にわたる審議の結果を「新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書」にまとめ、第20回小委員会(平成21年10月)に報告した。
この報告書を踏まえ、第22回小委員会(平成22年7月)では、新しいタイプの商標の登録要件に関し、①一商標一出願の原則、②識別性、③商標の類似、④その他の拒絶理由(公益的な音、著作権等他の権利との調整、機能性等)について審議をした。
さらに第24回小委員会(平成23年2月)で、新商標WG報告書において示された新しいタイプの商標の特定方法や出願日認定の考え方に関し、諸外国の実態の調査並びにシンガポール条約規則における新たな規律、及びマドリッド・プロトコルにおける運用との整合性の確保に留意し、小委員会において再度審議を行ってきた。
今後の方向性について経済産業省・特許庁は、新たに「音」「動き」「ホログラム(立体画像)」「色彩」「位置」の5タイプの商標権を設定する方向で最終調整に入った。ただ米国や韓国では権利を取得できる「匂い」の設定を見送った。2013年度の通常国会に商標法改正案を提出する方針で、順調に成立した場合2014年度にも施行する。
島田邦男
琉球ボーテ(株) 代表取締役
1955年東京生まれ 工学博士 大分大学大学院工学研究科卒業、化粧品会社勤務を経て日油㈱を2014年退職。 日本化粧品技術者会東京支部常議員、日本油化学会関東支部副支部長、日中化粧品国際交流協会専門家委員、東京農業大学客員教授。 日油筑波研究所でグループリーダーとしてリン脂質ポリマーの評価研究を実施。 日本油化学会エディター賞受賞。経済産業省 特許出願技術動向調査委員を歴任。 主な著書に 「Nanotechnology for Producing Novel Cosmetics in Japan」((株)シーエムシー出版) 「Formulas,Ingredients and Production of Cosmetics」(Springer-Veriag GmbH) 他多数
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