ジルスチュアート(コスメ)の2011年度実績(業績)は、震災の影響で4月下旬頃まで厳しい状況が続いたものの、6月と8月の限定コレクション投入で回復基調に転じ、11月~1月のギフト需要が高まる時期に合わせ新たな提案を実施するなど、前半の不調を後半の巻き返しによりカバーすることで、最終的には前年実績をクリアすることができた。ブランド創設8年目を迎え、真の意味での進化が問われるジルスチュアートの今年度の戦略や中長期の展望について、佐藤真由美ブランドマネージャーにインタビューした。
昨年度は単価減を客数増でカバー
ギフトによる新客獲得に手応え
ジルスチュアートは、ファッションブランドとして1994年に誕生、ニューヨークコレクションでデビューした。2005年のライセンス契約締結以降、コーセーが日本国内における化粧品の開発・製造を手がけてきた。2009年10月には、海外展開のさらなる強化に向け、グローバルにおける化粧品販売のライセンス権を取得し、現在に至っている。
2011年度の売上実績については、震災によるマイナス影響を受け4月下旬頃まで苦戦が続いたものの、6月と8月に発売した限定コレクションから徐々に盛り返した。11月以降はギフト需要を取り込むなど、ブランドの強みと新しい施策をうまく組み合わせた結果、11月から3月にかけては2ケタ成長を果たし、トータルでも前年実績を上回った。
2011年度の客単価は、定番品よりやや価格が低めな限定コレクションの販売数量が伸び、新客との出会いを広げるべく、1品単価が低めなギフトの提案強化を図ったことで前年よりやや減少した。
一方、客数については、バスボディの提案強化でギフト需要を取り込み、新客の獲得につなげたことにより着実に増加。全体では、単価減を客数増でカバーした。
「ギフト需要が高まる頃から積極的にギフト提案を行った。ギフトボックスに詰め合わせ通行人の目に触れやすいところに置くなどした結果、ターゲット世代以外の方や、男性の方など新しい客層が獲得できた」(佐藤氏)
店舗数については、松坂屋名古屋店に新店を3月にオープンし、国内が百貨店32店、専門店17店の計49店となっている。一方、海外は、台湾10店、香港5店の計15店での展開となっている。
「海外については、既存店1店あたりの売上げを増やしつつ、免税店の拡大を進め、今年度中にeコマースの展開を始める」(佐藤氏)
ブランドイメージを維持しつつ
新たな販売ルート確保にも注力
売上構成比は、ポイント&ベースメークで半数以上を占め、バスボディ&フレグランスで2割、スキンケアで2割弱、雑貨が1割となっている。
昨年は、スキンケアの分類に含まれる「リップバーム」(1500円)がよく売れた。年齢に関係なく使え、コンパクトでかわいらしく持ち運びに便利な点が好評で、ギフトにも好適なため、チークを抜いて売上個数№1になっている。
バニラの香りが印象的なフレグランス「ヴァニララスト」(8000円)も、発売初月の12月に計画比200%、それ以降も150%と予想以上にヒットした。
「丸みを帯びたデザインとし、バニラの香りを爽やかにアレンジして再投入した。店頭にテスターを設置したところ、20メートル先までずっと香りが広がっていき、集客にもつながった。柔らかく甘めな香りは非常に珍しく、心地よいとか、温かみがあるなど好評で、元々のファンはもちろん、ターゲットに設定した若い女性層にも支持された」(佐藤氏)
昨年5月に国内で展開を開始したeコマースは、当初の計画数値が高かったため、計画をやや下回って推移している。今年度は、ユーザー目線に立ったサイト構築でテコ入れを図る方針だ。
また、近年利用者が急激に拡大しているSNSへの対応として、昨年12月からはmixi、今年4月からは、Facebookを開始している。
「実際にmixiやFacebookにアップされた情報をみて店頭に限定サンプルを受け取りに来た方が少なくなく、店頭活動との連動はできつつあると感じる」(佐藤氏)
さらに、2月からはカタログギフトやブライダルカタログでの販売もスタートした。スタートから好評で、一時ハンドクリームが店頭の在庫がなくなるぐらいに売れた。今後もブランドイメージを維持しつつ、既存店とのバッティングがない販売ルートの確保にも力を注いでいく。
今秋にバスボディの刷新を予定
24時間愛され続けるブランドへ
百貨店の有力化粧品ブランドの認知度は、多くて7~8割ほどと言われているが、ジルスチュアートの国内におけるブランド認知度は、ブランド創設から7年という短期間にもかかわらず6割強に達する。2年前は5割程度だったので、約1割もアップしている。
「今年はターゲットとする20代より少し上の年代層の方や、今までのテイストとは異なるお客様へアプローチできる雑誌へ出稿を増やす計画だ」(佐藤氏)
2012年度は、客単価アップに向けた取り組みとして、ブランドの柱であり、メークを仕上げるうえで欠かせないアイテムであるチークと、その対となるベースメークの2アイテムを強化していく。
さらに、集客面で貢献度が高かったバスボディを10月にリニューアルし、客数アップに向けた取り組みを強化していく。これらの施策を通じ、客数と客単価をアップさせることにより、前年比クリアを目指す。
「バスボディの刷新でかわいすぎて敬遠していた人や一度離脱した人を取り込んでいく。店内では、宝石箱をイメージしたピンクの売り場でブランドイメージを表現するとともに、ライフスタイル系の雰囲気をうまくアレンジして取り入れていく。既存のボディミルク、バスエッセンスといったインバス、アウトバス商品ほか、部屋の中で楽しめるファブリックフレグランスの導入を予定している。ギフト需要に対応するため、現在、2種類で展開するギフトボックスの種類も増やしていく」(佐藤氏)
今年度は新規出店を予定していないため、「1店あたりの売上げを増やすことに注力していく」(佐藤氏)という。
中長期には、20代をメインターゲットに「かわいい」「ピンク」といったブランドの特長をぶらすことなく、ライフスタイルブランドとして進化を図っていく方針だ。
「今年で8年目を迎え、かわいいだけでは今後の成長・発展は望めない。コスメという範疇を越え、24時間何らかの形で身近なアイテムとして愛用され続けるようなライフスタイルブランドへと進化していきたい」(佐藤氏)
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