コーセーは、コメ由来の成分を配合した新スキンケアシリーズ「肌極 はだきわみ」の販売を2012年11月16日より開始している。
20代・30代女性の肌悩みを調べたところ、多くの人が肌のゆらぎを実感していたため、さらに研究を進めたところ、その悩みの解決には、8年前に導入し発売3カ月で40万本以上を売り上げた「モイスチュアスキンリペア」の主成分である「ライスパワー№11」が最も効果を発揮するということを突き止め、再びスポットを浴びせた。
そこで今回は、「ライスパワー№11」の研究開発に携わった尾之上聡氏(コーセー研究所開発研究室薬剤開発グループ)に、「肌極 はだきわみ」の開発背景について話を伺った。
一番身近にある素材「お米」に
さまざまな美容効果を発見
――古来からあるお米の美容法とはどういうものですか。
尾之上 古来より日本人が主食としてきたお米は、稲刈り後、脱穀・籾摺り(もみすり)の過程を経て玄米となり、さらに精白する過程において、籾殻(もみがら)や米ぬかなどいろいろなものが出てきます。
それを美容にも有効活用できないかと考えた古来の人々は、米のとぎ汁や米ぬか風呂に乾燥した肌をしっとりさせる効果があることを長年の経験から学んでいて、粧材として使用してきたのではないかと考えています。
いろいろな美容法がある中、一番有名なのは米ぬかパックかと思います。昔の女性が化粧をしなくても、白く、つややかで張りのある美しい肌をしていたのは米ぬかで洗顔をしていたからとも言われています。
現在では、米ぬかから油を抽出し、クレンジングオイルの基材としても使用されています。ある意味、一番身近な素材だったが故に美容粧材として利用しようという発想が生まれてきたのではないかと考えています。
――お米に着目した経緯を教えてください。
尾之上 基本的に食べて身体にいいものは、肌に対してもいいのではないかという考え方で、米については早くから着目していました。実際、米ぬかから抽出したエキスには、細胞の活性化や美白に効果があることを細胞レベルで確認しており、一方で米ぬか油はオイルクレンジングの基材やエモリエント成分として使用しています。
私たちの一番身近にある素材であるだけに、お米の効果を掘り下げてみるといろいろなものが出てきましたので、どんどんのめり込んでいくようになりました。
肌極の主成分である「ライスパワー№11」についても、こうした一連の研究開発の流れの中で注目していった素材ということになります。
幾多のライスパワーエキスの中でも
№11に最も優れた保湿効果見出す
――「ライスパワー№11」の生い立ち、特徴について教えてください。
尾之上 ライスパワーエキスは、日本酒をつくる発酵の技術を応用して得られた成分で、白米100%からできています。そして、発酵・熟成の違いでできた数多くのエキスの中から最も保湿効果に優れたものをスクリーニングしたものが「ライスパワー№11」になります。
このエキスには、米由来の数十種類のアミノ酸・豊富なペプチド・糖類を生体に有効なベストバランスで含有しているだけでなく、本来、米の中には存在しない様々な効果成分も含まれています。これらの効果成分と同じものを化学的に合成することはまず不可能です。
――「ライスパワー№11」の研究をしていく過程でどんなことがわかってきましたか。
尾之上 「ライスパワー№11」は、保湿力の高さとともに角層にある細胞間脂質の主要成分である「セラミド」の生成を促して肌の保水能力を改善させることが実証されています。まさに「ライスパワー№11」の謳い文句でもある「皮膚水分保持能の改善」になります。
ちなみにライスパワーエキスには、異なる機能のものが幾種類もありますが、「水分保持能の改善」が認可されたのは№11だけです。この「水分保持能の改善」を証明するデータを見たときに、この素材は水分保持能を改善することにより、さらに優れた肌効果を有するのではないかと、強く感じたことを覚えています。しかし社内には「保湿の素材はいっぱいある」という意見もありました。それだけにその効果の実証には力が入りました。
もともと人の皮膚では、ある程度水分が蒸発しているのですが、それが出過ぎてしまうと乾燥してしまいます。実際、そのような状態となっている乾燥肌の方にお使いいただいても水分保持能が回復している、つまり肌質を改善していく効果があるというデータが得られたため、さらにデータの充実に努めました。
するとセラミドの産生量を増やすだけでなく、角層細胞自体の成熟化も促していく働きがあることも確認されました。つまり、セラミドの量を増やして水分保持能を改善するだけでなく、角層の細胞一つひとつを成熟化させ、角層全体の状態を変えていく働きがあることがわかってきました。
角層の細胞一つひとつが成熟化して水分保持能が保たれているため、健常な肌の方にお使いいただいても水分保持能は増大していました。
さらに「ライスパワー№11」配合製剤の連用試験では、被験者の皮脂量が少なくなる傾向も認められました。これは角層の皮膚水分保持能が改善されたことでバリア機能も改善し、元来バリア機能を補う目的で分泌される皮脂の分泌量が減少したと考えています。
こうして水分保持能の改善が肌そのものを変えていく効果につながっているというデータが得られて、これまでの保湿素材とは全く違うという思いを強くして、実際の処方開発を含めて検討のドライブをかけていきました。
「水分保持能の改善」が唯一謳える
ライスパワー№11配合の開発秘話とは
――国内で初めてかつ唯一、医薬部外品として改善を謳うことができるスキンケア成分「ライスパワー№11」(2012年10月末現在)の配合にあたり様々な困難があったとお聞きしています。
尾之上 これは「ライスパワー№11」に限ったことではありませんが、効果の高い素材ほど、安全性面や製剤化面での課題が多くなります。実際「ライスパワー№11」も安定で、かつ毎日お使いいただける使い心地を保った上で製剤化することは非常に困難でした。
一例を挙げますと、滑らかな使用感を付与するために加える成分が「ライスパワー№11」との相性が悪く、配合すると安定性が悪くなることがわかりました。そこで安定化を図ろうとすると、今度は浸透感が失われるといった問題が生じました。そこで今回は、オクチルドデカノールという浸透性に優れた油を使うことにしましたが、その配合にも処方設計上の工夫が必要となりました。
このように、「皮膚水分保持能の改善」という初めての効果であるが故に、処方設計においてはこれまで経験したことにない問題に直面し、それを一つひとつ解決していきました。
――いち早く「ライスパワー№11」を配合することができた最大のポイントは。
尾之上 私たちはこれまで長い間研究を続けてきた中で、数千という素材と数万という処方バリエーションを開発して参りました。当然、それらに対する安全性や処方上の相性などの情報も持っています。そうした積み重ねがあったからこそ、「皮膚水分保持能の改善」という初めての効果効能に対して、その効果を損なうことなく配合することが可能となり、製剤としての効果検証でも、非常に高い改善効果があるものを作ることができたと考えています。
この記事は週刊粧業 掲載
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