上場企業各社は、自社の様々な情報を有価証券報告書に記載し、年に一度開示しています。今回は、この中の「事業等のリスク」という項目にフォーカスしてみます。

 「事業等のリスク」には、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動、特定の取引先・製品・技術等への依存、特有の法的規制・取引慣行・経営方針、重要な訴訟事件等の発生、役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を一括して具体的に、分かりやすく、かつ、簡潔に記載することが求められています。このため、各社は自社にとってリスクであると認識している様々な項目をここに注記しています。

 では、早速各社の「事業等のリスク」の内容を分析してみましょう。なお、今回対象としたのは花王、資生堂、コーセー、ポーラ・オルビスホールディングス、ユニ・チャーム、ライオンの6社です。

 各社とも、様々なリスクについて箇条書きでリスク情報を開示しています。化粧品・トイレタリー業界という同業での比較なので、ある程度各社が抱えているリスクは同じようなものが並んでいることが分かります。図表は、同様のリスクについて2社以上が自社にとってのリスクとして開示している項目です。

新日本有限図.jpg

 特に為替変動や原材料相場変動に関連するリスクについて、6社中6社が開示している点が注目されます。また、次に天災リスクや他社買収等のM&Aにおけるリスクも6社中5社が開示していることも注目です。

 図表のリスク項目以外では、ポーラ・オルビスホールディングスのいくつかの事例が特徴的でした。例えば、自社グループ内で様々なブランドを展開していく中で将来的にグループ内の製品同士での競合が発生しうるリスク、持株会社制を採用している自社グループにおける持株会社特有のリスク、大株主でもある公益財団法人ポーラ美術振興財団との関係などについても記載されています。

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田中計士

新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー

2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/

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