第26回 中国のメディア事情②

 改革開放前の中国メディアは党組織の一部であり、財政支出負担事業単位として、政府からの予算を与えられ、運営されてきました。広告市場が形成されだしたのは、改革開放政策が始まった1979年からです。

 広告費の拡大により、各メディアは、運営経費を自前で賄うようになり、7割程度のメディアは、政府の財政支出を受けなくなっています。しかしながら、現在でも主流メディアは、一部財政支出負担事業単位であり、従業員は公務員に準ずる立場です。今回は、テレビ広告と新聞広告の動向をまとめてみました。

①テレビ広告

 2009年末現在でテレビ局は272局、人口カバー率は97.2%であり、中国で最も影響力のあるメディアです。中国のテレビ局は、日本のNHKに相当するCCTVを頂点にした級別(中央級、省級、市級、県級)に別れています。中央級は中国全土を、省級は省および自治区を、市級は市を、県級は県を、それぞれをカバーエリアとしています。

 中国では、この制度があるため、テレビ局同士の競合はありませんでしたが、1980年代に始まった放送局衛星化により、省級のテレビ局のチャネルが全国で見られるようになり、テレビ局同士の市場競争が生まれました。各テレビ局は、より良い広告収入を得るため、消費者に魅力的な番組作りを行っています。また、あえて視聴者を絞り込んだ番組を制作し、広告を獲得しやすい様にする戦略を採るテレビ局が増加しています。

 TVCMの場合、日本と同様「スポット買い(5秒、15秒、30秒、45秒、60秒)」「番組提供」「冠番組提供」の3種類があります。スポット購入の価格は、各テレビ局が、専門の視聴率機関のデータに基づき定価を定めており、料金は半年から1年ごとに改定されます。価格は、中国での主流であるスポット広告の30秒を基準に計算され、番組提供:スポット広告30秒の1.5倍、冠番組提供:スポット広告30秒の1.5倍、といった形で計算されるケースが多くなっています。

 中国広告市場の4分の1程度を稼ぎ出しているのが、CCTVです。CCTVには、現在29の無料チャンネル以外に、中国電視網という有料放送チャンネルが20チャンネル近くあります。中でも最も競争率の高いスポットは、CCTV-1チャンネル(総合チャネル)の19時のニュース番組タイトルが出た直後の15秒間です。この広告枠をはじめとして、ゴールデンタイムの広告枠については「黄金資源広告招標会」と呼ばれるオークションにかけられます。この広告入札は、成約に成功した企業名と入札額が大きく取り上げられ、中国メディア業界の一大イベントとなっており、中国では「中国経済的晴雨表」と呼ばれ、中国経済や企業動向を占う指標となっています。

 2011年の広告枠が決まる入札会は、2010年11月8日に行われ、前年比115.5%の126億6870万元の成約額となりました。一方、衛星化が進展し全国で視聴可能となった省級テレビでは、若年層向けファッション・エンターテイメント路線、中高年路線、農村向け路線など、視聴者を絞り込んだ戦略がトレンドになっています。欧米系をはじめとした外資系メーカーで注目を集めているのが、若年層向けのファッション・エンターテイメント番組に注力する湖南衛視です。

 化粧品メーカーでは、P&G、ロレアル、ユニリーバなど、マスブランドに注力する欧米系メーカーによる出稿が中心で、日系メーカーは雑誌での広告が中心でしたが、現在、資生堂の「ツバキ」が、過去最大の広告予算を確保して全国でTVCMを流して知名度を一気に高める戦略を採用しており、業界の注目を集めています。

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浅井潤司

(株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/china/

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