サッカー日本代表、5大会連続のW杯出場決定、本当におめでとうございます。
恐らく、2013年6月4日にホームで行なわれたオーストラリア戦、ご覧になった方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
この試合を観ながら感じたことがあります。
日本は、後半37分、オーストラリアに先制ゴールを許してしまい窮地に立たされました。
残り時間はわずか8分。体力的にも厳しくなってくる時間帯でもあり、「まだまだ、諦めるのは早いから頑張れ」とは思うものの、「今日は決められないかも」と多くの方が思っていたかも知れません。
ところが、本田選手は「諦めない」気持ちだけではなく、それを自らの動きで示していました。ボールを貰うために見方の視界に積極的に走り込んでいく。たとえボールを持っていない場面でも、相手に接触を仕掛けて大げさに転んでみせる。前日にロシアから戻ってきたばかりとは思えないような体力を感じさせました。そして、相手のちょっとした隙を狙って豪快なミドルシュートを放ちます。
このシュートが相手選手に当たってゴールラインを割り、あのコーナーキックを獲得しました。ここで日本はショートコーナーを選択、すぐさま本田選手にボールをあずけ、本田選手は中央の味方に向かって早めのパス、それがなんと相手のハンドを誘ったわけです。
報道では、わかりやすいこともあってか、PKのシーンが取り上げられますが、あのPKを獲得するまでの動きこそ本田選手の真骨頂ではないか、そんな感じを受けたのです。
この試合の数日前、ロシアで記者会見を開いた本田選手は、親善試合でブルガリアに破れた日本代表について、こんな話をしていました。
「人間、気が緩んでないと思っていても、気が緩むものなんだ。だから、気の緩みに陥らないように自分自身と向き合い続けなきゃいけない」「これで本当に大丈夫か? やり残していることはないか? もっと準備すべきことがあるんじゃないか? 常に自分に問い掛け続けることが、自分自身と向き合うということ」。多くの場合、「気の緩みに気をつけて、しっかりやっていこう」という声掛け程度で終わらせてしまいそうな言葉です。
なぜならば、気が緩んでいるのかいないのかは、その瞬間にはわからないからです。結果を出せなかったときに、「気が緩んでいたかも」という使われ方をするような言葉なのです。
ところが、そんな反省の弁など決して言いたくない本田選手は、「気の緩みって何だろう」と考え抜き、「絶対に気の緩みはなかった」という自分であるべきだと結論づけ、自らが納得できる具体的な行動をとり続けます。
大リーガーのイチロー選手にも見られることですが、トップアスリートの方々は、徹底的に言葉の意味を考え抜く傾向が強いようです。
考え抜く過程の中で、自分がすべき行動を決定づける、あるいは行動の質を高める、ことにつなげているからなのだろうと思います。
これは、ビジネスにおいても同じことでしょう。
その場面場面で使われる言葉の意味、言葉の定義を徹底的に考え抜く姿勢がなければ、個々人の、あるいは組織の行動の品質は決して上がりません。
是非、このメカニズムを肝に銘じ、行動の前にまず「考え抜く」時間をしっかりとっていただくことから始めてもらいたいと思います。
【著書】
『これだけ!PDCA』(すばる舎リンケージ)
『絶対に断れない営業提案』(中経出版)
【連載】
◆日経ビジネスオンライン『売れる営業提案』
第5回:「売上目標は達成しないのが当たり前??」
◆ダイヤモンドオンライン『経営の"肝"-あなたの会社が成長しない理由は?』
第3回:新規開拓に邁進できる営業体制を作る
川原慎也
(株)船井総合研究所 東京経営支援本部 部長 グループマネージャー
1998年船井総合研究所入社。1兆円以上の大手企業から社員3名の零細企業に至るまで、企業規模や業種業態を問わずに戦略実行コンサルティングを展開するという同社では異色の経験を持つ。「視点を変えて、行動を変える」をコンセプトに、戦略策定段階では「お客さまとの約束は何か」→「約束を果たすためにやるべき仕事は何か」を考え抜こう、計画策定段階では「計画が頓挫する可能性の対処策」を考え抜こう、実行段階では「勝たなきゃ組織一体化しない」から“勝ち”を積み重ねる階段を考え抜こう、と経験に裏打ちされた“視点”への刺激が散りばめられる。最近は、「営業戦略の落としどころは営業マンの行動配分」「断れない提案」「新規開拓一点集中」、等の“視点”の提案を始めている。
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