第21回 創業40年で7000億円突破、「日本電産」経営のポイント!

 日本電産という会社をご存知でしょうか。現在も代表取締役社長を務めている永守重信氏が1973年に創業した会社で、2013年3月期のグループ連結決算では売上高7000億円を超えるところまで成長してきました。日本電産の急激な成長を支えてきた大きな原動力が、この40年間で37社もの企業を買収してきた積極的なM&Aにあります。

 しかも多くのM&Aは、やや苦境に陥ってしまった企業を買収する戦略を採っています。つまり、数多くの企業を再建しながら、グループを成長させてきたわけです。

 その再建のノウハウは非常に興味深いところですが、永守社長の著書等で発信しているメッセージを読み解くと、基本は5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)にあるようです。(永守社長自身は、この一般的な5Sに「作法」のSを加えて6Sと呼んでいます)

 私たちの感覚で考えると、工場を持っているようなメーカー系の企業であれば5S活動といったことは普通にやっていると思ってしまうのではないでしょうか。

 事実、日本電産に買収された企業の従業員も、「5S活動なんて当たり前にやっていますよ」といった思いの方が強かったようです。

 しかしながら、いざ日本電産のスタッフからチェックを受けると、全く評価されないという現実を突きつけられます。「普通にやっていますよ」と思っているレベルが、「全く出来ていない」と評価されるわけですから、両社では5S活動の定義が全く異なるわけです。

 このレベルの差はどこから生じるのでしょうか。

 様々な関係者から話を聞いてみたところ、5S活動をスタートする時点の目的が全く異なることに気がつきました。

 「当たり前にやってる」「普通にやってる」という企業では、「5S活動なんて当たり前にやらなきゃいけないことだから、全員で取り組みましょう」というイメージで取り組んでいるところが殆どです。結果として、「これ位やっていれば問題ないだろう」という低いレベルの取組にとどまってしまっているのです。
 一方、日本電産のような企業は、売上や利益といった業績を上げることを目的として5S活動に取り組んでいます。結果として、「ここまで徹底しなければとても利益には繋がらない」という高いレベルの取組が展開されるのです。

 5S活動など当たり前だと言いながらも、「何の為に」という目的によって現場の取り組むレベルには雲泥の差が出てきます。

 私は、講演などの場で、あるいはお付き合いしているクライアント企業に対して、日本電産の事例を上げながら「5Sを徹底できる会社はすべからく儲かるんだから、是非やってみて下さい」という話をしますが、なかなか着手しない会社が殆どですし、着手しても継続できない会社が殆どです。そして、多くの方は、大変不思議なことですが、5S活動よりも余程困難だと思われることに力を費やしています。

 拙著「これだけ!5S」でも説明していますが、会社のベースとなる筋肉をつけるために5S活動はあり、徹底できる会社は当然、より高い成果を出せるようになっていくのです。

 是非、皆さんの会社の5S活動、見直してみて下さい。

【著書】
『これだけ!PDCA』(すばる舎リンケージ)

『これだけ!5S』(すばる舎リンケージ)

『絶対に断れない営業提案』(中経出版)

【連載】
◆日経ビジネスオンライン『売れる営業提案』
第5回:「売上目標は達成しないのが当たり前??」

◆ダイヤモンドオンライン『経営の"肝"-あなたの会社が成長しない理由は?』
第3回:新規開拓に邁進できる営業体制を作る

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川原慎也

(株)船井総合研究所 東京経営支援本部 部長 グループマネージャー

1998年船井総合研究所入社。1兆円以上の大手企業から社員3名の零細企業に至るまで、企業規模や業種業態を問わずに戦略実行コンサルティングを展開するという同社では異色の経験を持つ。「視点を変えて、行動を変える」をコンセプトに、戦略策定段階では「お客さまとの約束は何か」→「約束を果たすためにやるべき仕事は何か」を考え抜こう、計画策定段階では「計画が頓挫する可能性の対処策」を考え抜こう、実行段階では「勝たなきゃ組織一体化しない」から“勝ち”を積み重ねる階段を考え抜こう、と経験に裏打ちされた“視点”への刺激が散りばめられる。最近は、「営業戦略の落としどころは営業マンの行動配分」「断れない提案」「新規開拓一点集中」、等の“視点”の提案を始めている。

http://www.funaisoken.co.jp/site/profile/profile_142.html

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