今回からは、中国や韓国といった東アジアだけでなく、現在注目を集めている東南アジアや、今後より一層注目を集めると予測される南アジアなど、アジア全体の美容マーケットについて書いていきたいと思います。
第1回目は、アジア、特に東南アジアと南アジアでビジネスを展開するにあたって重要となるBOPビジネスについて紹介します。
●BOPビジネスとは
BOPは「Bottom of the Pyramid」もしくは「Base of the Pyramid」の略で、所得別人口構成の「ピラミッドの底辺」を指し、経済ピラミッドの底辺にいる年間所得3000ドル未満で生活している40億人を顧客として捉えた概念です。
BOP層の40億人の総収入は5兆ドルになり、これは日本の実質国内総生産に匹敵するという巨大なマーケットです。また、経済成長を続けるアジアのBOP層は中間層予備軍、つまり中間所得者層をターゲットにしたミドル市場の前哨戦であることから、欧米系のユニリーバやP&G、さらには資生堂もBOP層へのアプローチを強化しています。化粧品業界におけるBOPビジネスの成功事例として良く知られているのが、ユニリーバの「シャクティプロジェクト」です。
●BOPビジネス成功事例:ユニリーバのシャクティプロジェクト
ユニリーバは、2000年より、インド市場において、農村部に住む女性に個人事業主となってもらい、ユニリーバの小分けした安価な製品(1袋約2.5円の使いきりパック)を訪問販売してもらうシャクティプロジェクトを展開しています。インド政府にとっては、ユニリーバの製品を農村部の女性を通じて売ることでインドの衛生環境に役立つだけでなく、仕事に就く事が難しい農村部女性の所得向上や社会進出にも結びつきます。これらのことから、この活動はインド政府のバックアップを受けることができました。
2000年に立ち上げられたシャクティの取り組みは、2013年末までに5万人以上のシャクティ事業者を誕生させ、13万5000の村で330万世帯を対象に販売活動を行うまでに成長しました。これにより、ユニリーバのインド法人は、農村部への直接販売を倍増させることができました。ユニリーバでは、現在、スリランカ、バングラデシュ、フィリピンでもシャクティプロジェクトの取り組みを行うことで、シェア向上を図っています。
浅井潤司
(株)矢野経済研究所主席研究員
2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。
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