第23回 競争ではなく共創

【C&T2015年7月号6面にて掲載】

はじめに

 30cmのサバから100㎏のマグロが産まれる? この2種ともサバ科に属する“近縁種”であり、遺伝的に近い魚なので今ではその可能性がある。そもそも魚は体外受精で産まれる。そこでマグロを産ませるといっても、マグロの卵や精子をつくる免疫系が未熟な孵化直後のサバの仔魚との協力関係から研究する。すでにこの操作でヤマメからニジマスを産ませることに成功した(図1)。


(図1 ヤマメから産まれたニジマス1)

 魚だけではない。人間の社会もさまざまな協力関係によって、共に価値を生み出す“共創”が注目を集めている。共創とは、一部の優秀な人間の発想をベースにするのではなく、さまざまな人たちの知恵を結集し、新たな価値を生み出していくこと。価値創造の時代といえる。今回はその企業の実例を紹介する。

異業種コラボ

 近ごろは「ものの豊かさ」より「心の豊かさ」が重視されるようになり、人々が求める商品・サービスの傾向も変化している。価格重視ではなく、付加価値を重視する傾向が強まっているといえよう。例えば“異業種コラボ”も、その現れだろう。

 家電量販店のビックカメラとカジュアル衣料のユニクロがコラボした「ビックロ」は、全く異業種の共同展開である。背景にエコポイント制度の終了や地上デジタル放送への移行に伴う特需の反動で、家電業界自体が需要不足に陥っていることがある。共に集客力に期待している。

 各階の売場は、コラボレーションを意識したディスプレイを用意している。ユニクロの機能性衣料である「ヒートテック」の横にビックカメラで取り扱う暖房器具を置いたり、ユニクロの衣料品を身に付けたマネキン人形に、ヘッドホンなどの家電製品を持たせたりしている(図2)。



(図2 「ビックロ」の店内(右)と「MOSDO」の商品(左)2)

 各フロアとも会計こそユニクロとビックカメラ別だが、店員は共同ユニフォームとなっている。

 モスバーガーとミスタードーナツの「MOSDO」は、売場だけでなく業種の垣根を越えた共同が特徴だ。モスバーガーを運営するモスフードサービスと日本のミスタードーナツ事業を運営するダスキンが、資本・業務提携し共同事業として「MOSDO」を開始した。共同開発商品としては、モスバーガーが中央部に穴が開いたハンバーガー「ドーナツバーガー モス(わさびソース)」、「ドーナツバーガー テリ(わさびソース)」を、ミスタードーナッツでは、ハンバーガーの形をしたドーナツ「ドーナツバーガー」、フライドポテトの形をしたドーナツ「ポテド」を発売している(図2)。

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島田邦男

琉球ボーテ(株) 代表取締役

1955年東京生まれ 工学博士 大分大学大学院工学研究科卒業、化粧品会社勤務を経て日油㈱を2014年退職。 日本化粧品技術者会東京支部常議員、日本油化学会関東支部副支部長、日中化粧品国際交流協会専門家委員、東京農業大学客員教授。 日油筑波研究所でグループリーダーとしてリン脂質ポリマーの評価研究を実施。 日本油化学会エディター賞受賞。経済産業省 特許出願技術動向調査委員を歴任。 主な著書に 「Nanotechnology for Producing Novel Cosmetics in Japan」((株)シーエムシー出版) 「Formulas,Ingredients and Production of Cosmetics」(Springer-Veriag GmbH) 他多数

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