第24回 男性だけではなく女性にも Part2

【C&T2015年10月号9面にて掲載】

はじめに

 元気のなさは目にあまる「熟女」ならぬ「熟メン」オヤジの皆さん!バブル崩壊とリーマンショックで「傷ついた戦士」になったままでは、日本の活力は戻ってこない。ある美容調査1)によると、「身体の気になる部分をケアしている」男性は、25~44歳が59.3%となった。

 「男の曲がり角」を迎えて、美容に関する意識が高く「中年オヤジ」にはなりたくないと思っている。臭い・体型・肌質の変化など、加齢が「自分ゴト」化する世代であるとともに、周囲には美容を当たり前に嗜む若手の「綺麗男(きれお)」世代がいるらしい。

 厳しいチェックの目を持つ女性も増加し、職場で女性の割合が増えれば、男性の身だしなみが気になる女性も多い。「身だしなみ」=美活は、必要な「ビジネススキル」とも言える。

 それでも、である。肌をコラーゲンで保つスキンケアや、ネールケアでサロンに通い、ボディーシェーバーで腕や眉などの毛の長さを整えるだけなら、周囲の女性に媚びて自分だけが生き残る「サラ美ーマン」だろう。そこで今回は本誌2015年1月号の「男性だけではなく女性にも」の続編を述べてみる。

女性の人権

 一昨年12月に公開されたマンスール女性監督によるサウジアラビアの映画、『少女は自転車にのって』をご覧になっただろうか(図1)。


(図1 ハイファ・アル=マンスール女性監督による映画「少女は自転車にのって」2012年製作。)

 10歳の主人公の少女ワジダが、男友達と競走する自転車欲しさに、学校で苦手なコーランの暗唱コンテストの優勝賞金獲得を目指して猛勉強する物語である。

 しかし、この映画はこの国の女性の厳格なイスラム戒律の悩みを静かに訴えていた。結婚前にラブレターを書いたりラブソングを歌ったりした女性を殺しても罪にならなかった事件が、2008年にあった。選挙権もない、仕事はお手伝い、女性の先生、看護士しかない。現在でも9歳から売りに出される。

 目だけ出した黒い服(アバヤ)の下はオシャレをしているが、女性だけにしか見せることはできない。レイプされると女性が処罰され男性は無罪。誘惑したという罪らしい。長男に権力が固定されて財産の分配もなく独裁できる。この映画監督は、外のロケでは男に指示することが出来ないので、車に乗って離れて演出している。

 この映画によって女性は自転車に乗って良いと法律が変わったが、まだ自動車は運転できない。イスラムにその淵源があるとしているが、女性の活躍が際立つアジア諸国では女性が車の運転をしている。この国が産油国であるため、人権問題として米国をはじめ先進国が経済制裁などをしないというが……。

 なんて酷い、世界はこんなに遅れているのか!と言いたくなるが、その姿は70年前の日本も同じである。戦前の日本女性は、法律的には、婚姻の自由意思も財産権も選挙権もない。「女子供」と呼ばれていた成人男子と子供の中間のような存在だった。

 それを変えたのがベアテ・シロタ・ゴードン女史(図2)である。

(図2 ベアテ・シロタ・ゴードン(Beate Sirota Gordon,1923年10月25日-2012年12月30日)3))

 彼女はウィーン生まれで、ユダヤ人の父親が東京芸術大学のピアニストだったために、5歳から日本で育った。米国留学中に日米開戦となり戦後日本にいる両親に会うために、GHQ(連合国総司令部)民政局に職を得た。1946年2月、突然GHQ憲法草案制定会議のメンバーとして、日本国憲法の起草の人権条項作成のメンバー3人のひとりになる。流暢な日本語とリサーチャーとしての能力があるといっても、周りは弁護士など法の専門家がいる中で、わずか22歳の素人だった。

 しかし、「女性の権利」については、当時の世界の憲法において最先端ともいえる内容の人権保護規定を彼女が書いた。GHQ内部で細かい草案を削除されようとした時、日本の女性のために涙を流して反対し、当時の日本政府にも反対された。現在もアメリカ合衆国憲法には、「両性の本質的平等」にあたる規定が存在せず、彼女の草案がいかに画期的であったことがうかがえる。彼女は、日本国憲法第24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)草案を執筆した事実が1990年代になって知られ、草案者として唯一、2012年まで存命した。

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島田邦男

琉球ボーテ(株) 代表取締役

1955年東京生まれ 工学博士 大分大学大学院工学研究科卒業、化粧品会社勤務を経て日油㈱を2014年退職。 日本化粧品技術者会東京支部常議員、日本油化学会関東支部副支部長、日中化粧品国際交流協会専門家委員、東京農業大学客員教授。 日油筑波研究所でグループリーダーとしてリン脂質ポリマーの評価研究を実施。 日本油化学会エディター賞受賞。経済産業省 特許出願技術動向調査委員を歴任。 主な著書に 「Nanotechnology for Producing Novel Cosmetics in Japan」((株)シーエムシー出版) 「Formulas,Ingredients and Production of Cosmetics」(Springer-Veriag GmbH) 他多数

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