【週刊粧業2015年11月19日号4面にて掲載】
今回は、近年注目を集めている『母娘消費』を取り上げたいと思います。母娘消費は1990年代半ばより団塊世代と団塊ジュニア世代の関係性を指す言葉として使われるようになりましたが、現在は概して40~60代の母とその娘が共にする幅広い消費を指し、『仲良し消費』や『絆消費』といった言葉で表されることもあります。
■背景と特徴
母娘消費の背景にあるのは、娘世代の未婚・晩婚化→長期にわたる親世代との同居・近居→関係性の親密化・友達化です。特徴としては、時間的・金銭的に比較的ゆとりのあるケースが多く、消費行動が活発であることが挙げられます。特に、双方の関心の高い美容や化粧品に関しては、意識や行動が似通ってくるため、母娘消費の傾向がより顕著に現れます。
例えば、リクルートライフスタイルが2013年に行った調査によれば、娘と一緒に「美容室に行く」「化粧品を買う」と答えた人は5割近くに達しています。また、1年以内のそれぞれの頻度については「2.6回」「4.3回」となっており、旅行や映画に一緒に行くことよりも多いことを示しています。
また、ノエビアが2014年に行った調査によれば、化粧品を使い始めたきっかけで最も多かったのは、「雑誌やCMなどを見て」(30%)と並んで、「親が使っているのを使用した」(30%)という回答でした。つまり、化粧品を選ぶことにおいて、娘にとって母親はマスメディアと同じくらい影響力のある存在であるといえます。
■主要企業の取り組み
こうした母娘消費を取り込もうと、主要企業は近年さまざまな施策を展開しています。
例えばコーセーの「雪肌精」では、『家族の日』(11月第3日曜日)に母から娘へ、『母の日』(5月第2日曜日)に娘から母へ、化粧品やサンプルを贈るキャンペーンを実施し好評を得ました。また、ノビエアも前記の調査結果を踏まえて、『母と娘が共有できるブランド』を目指し「ノエビア99」をリニューアルしています。
そして最近では、資生堂が30代以降をターゲットにした「ベネフィーク」に、10~20代と60代以降に向けた新ラインを導入しました。1つの化粧品ブランドで娘・母・祖母の3世代をカバーするのは業界初とのことで、注目度が高まっています。
従来の化粧品マーケティングでは、世代別にブランドを配置することが一般的でしたが、母娘マーケティングでは、仲の良い母と娘が同じ化粧品を使うという『絆』(楽しさや安心感)に着目し、LTV(顧客生涯価値)の向上につなげるという狙いがあります。
市場では少子高齢化が進み、つい40~60代の女性(母・祖母)にばかり目が向きがちですが、顧客のライフサイクルマネジメントを行ううえでは、娘との関係性も重要な視座であるといえるでしょう。