第11回 海外で平均月収の10分の1の価格の化粧品を売るマーケティング戦略の事例

【週刊粧業2016年6月20日号5面にて掲載】

 今回はブランド戦略という観点から、膨大な数の海外バイヤーのネットワークを有している海外進出支援企業のCOUXU㈱より共有していただいた化粧品に関するマーケティング事例を皆さんと共有したいと思います。

 今回の事例における販売地域は、なんとミャンマーです。私の専門である商標という観点から言うと、ミャンマーでは驚くことに未だ商標法すら整備されておらず、登録官事務所で商標の所有者である旨の宣言書を提出・登録し、新聞等に警告通知を掲載することで商標権の所有者である旨を立証容易にしておくという実務慣行が存在するのみです。そのような国で、平均的な月収の10分の1という高額の化粧品が売れていると聞いたら興味が湧きますよね。

 この度ミャンマーにおけるマーケティング成功事例として紹介するのは㈱コスメフリークさんで、かかとの角質をケアする商品を取り扱っています。ホタテの貝殻を使っているという点が大きな特徴で、もちろんブランディング上の差別化ポイントではありますが、それだけで売れるほど甘い世界ではないはず。お話を聞いていくと、成功の背景として大きく二つのポイントが見えてきました。

 一つ目は、進出国・地域の選定戦略についてです。こちらの商品は決して安価なものではなく、現地における販売価格は平均的な月収の10分の1に相当します。それゆえに、経済発展が進んでいる地域を狙うのがセオリーのようにも思いますが、コスメフリーク社さんが最初に狙ったのが、美容商品を積極的に輸入している国です。その中でも比較的費用をかけずに広告・マーケティングが可能だったのがミャンマーであり、最終的には現地のディストリビューターなどの感触も参考に進出地域を決定したとのことです。

 ここから得られる教訓は、イメージにとらわれずデータ・ファクトに基づいて進出成功見込みのある地域を絞っていく重要性です。経済発展の度合いというイメージ論で議論するのではなく、広告費用や、現地の感触を総合することでミャンマーが浮き上がってきたわけです。

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髙橋 伸也

フルブルーム国際商標事務所 所長弁理士

早稲田大学政治経済学部卒業。日本でも数少ない商標専門事務所を経営。化粧品・日用品業界をはじめとした中小・ベンチャー企業の商標出願支援と外国・国際商標出願支援を得意としている。商標・ブランディングの専門家として数々のメディアに寄稿している。

http://www.fullbloom-tm.jp/

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