第48回 子会社に対するガバナンス

【週刊粧業2016年10月3日号11面にて掲載】

 化粧品・トイレタリー業界では、近年、資生堂によるベアエッセンシャルやガーウィッチ、ポーラ・オルビスホールディングスによるジュリークやH2Oプラスホールディングス、コーセーによるタルトのM&Aがありました。その他、様々な業界でも日本企業によるM&Aが行われており紙面を賑わせています。一方で、関係会社による不正により親会社が多大な損失を受けるニュースも頻繁に目にします。

 M&Aでは、通常じっくり時間をかけて対象企業を精査することは困難であり、むしろ取得後に発覚する様々な問題への対応が成功の鍵と言えると思います。上記のような不正事例の頻発を考えると、その中でも新たに取得した会社へのガバナンス体制の構築・運用が必須といえます。

 今回は、子会社に対するガバナンスでのポイントを見ていきましょう。

 ①問題点

 M&Aを繰り返して子会社が増加した場合、成立ちも企業風土も違う各子会社に対するガバナンスの方向性やレベル感がバラバラになってしまうことがよくあります。この結果、次のような問題が起きる可能性があります。

 ●子会社管理部門がガバナンスについての各社ごとの個別対応を強いられ、事業や組織に関する本質的な問題に時間を割けなくなる。

 子会社間で、親会社に提出する資料の精度や重視する経営指標が異なることで比較可能性が維持できず、事業撤退等についての適切な経営判断が困難になる。

 ●同様の属性の会社群に対してそれぞれ違ったガバナンスの方向性や強弱が存在すると親会社に対する不満につながる。

 こうした問題が起きている状態を放置していると、各社での事業及び組織運営が一人歩きし始めてグループ一体となった事業運営が困難となるだけではなく、冒頭で述べたような不正につながる可能性が高くなります。

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田中計士

新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー

2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/

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