第8回 現代中国女性のメイク、ポイントは「目ヂカラ」にあり

【週刊粧業2019年11月18日8面にて掲載】

 文化的にも民族的にも近い間柄にあるという中国と日本。しかしそのメーク手法や好みには大きな差が存在している。今回は、中国女性がこだわるメークポイントを見てみよう。

 Web媒体「中国トレンドExpress」が行った中国女性のメイクアップに関するクチコミ調査において、「メイク×テクニック」というワードで調査をしてみたところ、具体的なメイク手法では「アイメイク」というキーワードが上位に上がった。

 クチコミビッグデータを集積しているトレンドViewerでは、伊勢半の「ヒロインメイク スムースリキッドアイライナー スーパーキープ」が「買いたい」日本商品部門で長年人気商品となっている。

 また、エキップの「SUQQU アイシャドウ」も2019年に入りクチコミ件数を積み重ね、ランキングを上げている。

「SUQQU アイシャドウ」クチコミ件数の推移
(出所:中国トレンドExpress「トレンドViewer」の数値を基にグラフ化)

 つまり中国の女性は、「アイメイク」に対してのコダワリが強いのである。

 中国で若い女性に人気のSNS「小紅書(RED)」で発信されている情報を調べるため、「メイク×目」というワードで検索をかけると、実に6万件以上もの書き込みが確認できる。

 その投稿の中で紹介されている「アイメイク」は、日本でもあるような「目を大きく見せる」といったものもあるが、多くは日本では見られない、目元を「華やか」に飾るものである。

 アイライナーをはっきり、くっきりと引き、アイシャドウも日本のような淡い色合いではなく、色が明確に見えるカラーを使った投稿が多い。

 すなわち、目の周りをどのように美しく彩るかが重要で、人気となるのは色の明確さを際立たせることのできる商品なのである。

 もともと中国、特に流行に敏感な北京や上海の若者向けのメークアップブランドでは、DiorやGucci、CHANELといった欧米ブランドが主流となっている。

 実際、そうしたブランドのプロモーションイメージも欧米女性を起用することが多く、こうした欧米風の目鼻立ちをはっきりさせたメークが憧れの対象となっていた。

 また日本よりも早い段階でブームとなった韓流も、同様に鮮やかな色を使った印象が強い。

 その中でも「目」に関して、伝統的には、杏の形をした目や丸く大きな目が美しいとされてきたが、現代社会で憧れとなるのは、切れ長の、まさに力を持った目である。日本でもおなじみとなった「ファン・ビンビン」のような目をイメージすればわかりやすい。

 そうしたアイメークが近年のKOLにも踏襲され、まさに「目ヂカラ」を有したアイメークが人気となっていっているのである。

 その背景については色々なことが語られているが、明確に「これだ」というものはない。

 ただ、中国の女性がアイメークを通じて発信したいイメージが、活力、芯の強さ、自信といった非常にポジティブな想いであることは確かだろう。

 伝統的な価値観でいえば、女性は「養われる」立場にあったが、現代社会では女性の社会進出、活躍は目覚ましく、中には「家を養う」立場の女性も少なくない。

 かつて毛沢東は「婦女能頂半辺天(女性は天下の半分を支えられるのだ)」との名言を発した。当時は意識改革を促す言葉であったが、今ではそれが現実になっている。

 そんな現代女性の活力を色濃く表しているのが、現代の中国アイメークなのである。
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森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

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