第51回 ロングセラー化粧品を育ててみたい!

【週刊粧業2019年10月28日号11面にて掲載】

 毎月あふれるほど多くの新商品が発売され、消えてゆく時代に、長年お客様に愛され、売れ続けているロングセラー化粧品がある。

 最先端の技術や進化を華々しくアピールする化粧品が注目される中、発売当初とほとんど変わらない姿で信頼を保ち、かつ20~30年と長期にわたって人気を維持している。このような商品は他の化粧品と何が違うのか。ロングセラー化粧品がどうして長い間存在できるのか考えてみたい。

 まず多くのロングセラー化粧品は決して変わらぬわけではなく、時代に合わせて密かな進化を続けていることが多いということだ。どんなに商品力が優れていても、頑なにこだわって理由もなく変えず、売れていることにあぐらをかいている訳ではない。

 多くのロングセラー商品は、ほとんどが3~5年おきに、密かな見直しを繰り返している。ある通販大手の化粧品会社では、全く同じようなデザインに見える容器も使いやすく改良したり、中身のバルクも新しい美容成分をプラスしたり、3年に一度ほどリニューアルしているそうだ。ただし、多くのファンを抱えているだけに、改良には細心の注意を払っているとのこと。リニューアルで既存顧客に離反されてしまっては意味がない。商品改良のたびに、新たなお客様を呼び込み、ファンを増やすことに注力しているとのことだ。

 ロングセラー商品でもリニューアルは不可欠だ。重要なのは変えるところと、変えてはいけないところの見極め、変える順番、変える方向性だと思う。

 では、何をどう変えていくのか。私は商品のリニューアルは、①お客様からの不満要因を取り除く、②情報提供の方法を改善する、③テクスチャーや原料はお客様の意見を取り入れながら、④使用手順やアイテムはお客様のライフスタイルに合わせて行うべきで、⑤コンセプトを変えたらもはや別ブランドにすべき、と考えている。

 まずは、お客様から不満要因を素早く取り除くことが重要であり、お客様の意見や不満、喜びの声などをすべてをデータとして蓄積しておくことが欠かせない。そうすれば、不満要因が増えた時にすぐに発見でき、スピーディーに改善の手を打てる。

 2番目には、商品をリニューアルするほどではないが、お客様に正確な情報が届いておらず、間違った使い方や誤解がある時には情報提供方法を変えねばならない。最近では、いろいろなチャネルで購入するお客様が多いので、情報提供方法やサービスをマルチチャネル対応にしておかないとお客様には届かないこともある。

 一方、原料やテクスチャーは十分に検証しながら、少しずつゆっくりと変えていくことがよいと思う。注目の成分であっても、従来の原料との相性もあるので十分検討すべきだ。またテクスチャーも、慣れ親しんだものから大きく変わるとお客様が離れてしまうことになる。モニターやアンケートなど、お客様を巻き込みながら、微妙なところを少しずつ変化させていくのがよいだろう。

 商品ラインナップや使用手順は、お客様の生活スタイルの変化に応じて変えていくべきだ。しかしコンセプトから外れてはいけない。あくまでも原点となるコンセプト、どのような女性にどんな風にキレイになってほしいかという想いに沿った変更であることが大原則で、ブランドの根幹であるコンセプト自体を変えては、信頼を失くすことになる。

 変えずに、変わり続ける。だからこそロングセラーである。化粧品以外でも、日本の老舗は、同様の変革を続けている。Webにも店舗にも化粧品があふれている今、目先の商品で大ヒットを飛ばすことに躍起になるより、質のよいものを適正に販売し、お客様に長く愛されるロングセラー化粧品に育てていくことに醍醐味を見出していくべきだ。
この記事のお問い合わせはこちら

鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

一覧に戻る
ホーム > 連載コラム > 第51回 ロングセラー化粧品を育ててみたい!

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop