第15回 「生産から消費までを効率化」(プロクター&ギャンブル シャーロット R オットー元上級副社長)

【週刊粧業2020年3月16日号6面にて掲載】

 今から20年余り前、週刊粧業の創刊45周年記念号の取材でオハイオ州シンシナチにある「プロクター&ギャンブル(P&G)」本社を訪れた。同市に本部を置く巨大企業としては、同社のほか全米最大のスーパーマーケット、「クローガー」がある。なかでもP&G本社はまさしく一つの町と言えるほど巨大だった。

 快くインタビューに応じてくれたシャーロット R オットー上級副社長は、1976年に同社に入社、ブランドマネジャー、広報担当部長などを歴任、91年から広報担当副社長、96年には上級副社長に就任した「たたき上げ」である。彼女の発音、そして話の内容も非常に明快で、とくに印象的だったのは、その爽やかさだった。

 P&Gの創業は1837年、イギリス系移民のウィリアム プロクターとアイルランド系移民のジェームス ギャンブルの二人が共同で、石鹸とろーそくの製造 販売会社をシンシナチに設立したのが始まりである。

 2019年6月期の売上高は676億ドル(約7兆3000億円)、営業利益は54億ドル(同5800億円)に達する世界最大の日用品メーカーである。

 「プロクター&ギャンブル社の企業理念についてお聞かせください」

 「当社の目標は、世界の消費者の生活を向上させる優れた品質と価値を持つ製品を提供することです。我々のビジネスは、グローバルブランド、ストロングブランドを創造することにあります。消費者の毎日の生活をインプルーブ(改善)する商品を提供し続けることですね。その中心は、当社に働く全ての従業員です。彼ら、彼女らの絶えざる改善への努力が成功の最大の基礎になっているのです」

 オットー副社長はさらに、同社の基本となる戦略について語った。

 「基本戦略の第1は、前述のグローバルブランド、ストロングブランドを作り上げることです。第2は、生産から消費までの流れを効率化することです。その代表的な例が『ECR』(エフィシェント コンシューマー レスポンス、効率的消費者対応)です。ECRは文字通り、生産から消費までの流れを簡素化し、コストをトータルで削減して、消費者にそれを還元するものです」

 P&Gは1992年、「ウォルマート」との間で、相互に販売情報を共有化してECRの展開を本格的に開始した。これを契機として、フランスの「カルフール」なども次々とP&Gとの間でECRに取り組み始めた。

 過日、ウォルマートの本部があるアーカンソー州ベントルビルで、最新の物流センター(DC)を見学 取材したことがある。驚いたのはその圧倒的な物量と、ベルトコンベアで流れる商品の速さである。それを支えているのがこのECRによる徹底した効率化の追求だ。

 基本戦略についてさらに同副社長は、「第3は、組織の強化です。なかでも一番重要なことは、従業員の才能を開花させる教育です。そのためには、全ての組織を簡素化し、よいアイデアの商品をマーケットに早く出すことです。これは全世界のプロクター&ギャンブルに共通しています」と締めくくった。

 なおP&Gは2015年、マックスファクター、ウエラなどのビューティブランドを「コティ」に売却した。P&Gのビューティ事業については「SK₋Ⅱ」を主力として、そのグローバルブランド化にさらに力を入れる。
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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