第4回 点×面

【週刊粧業2016年1月11日号5面にて掲載】

 美白市場はここ数年2100億円強で推移しており(弊社調べ)、アンチエイジング市場とともにスキンケアの二大市場を形成しています。今回はそんな美白市場のトレンドを読み解くためのキーワードとして、『点×面』をご紹介します。

■点から面へ

 従来、美白といえばシミのない「白肌」を指しました。1990年代から2000年代にかけて、カモミラET(花王)や4MSK(資生堂)、マグノリグナン(カネボウ化粧品)など次々と新しい美白有効成分が開発されましたが、これらは主として紫外線によるシミをターゲットに、それを作り出すメラノサイトと呼ばれる『点』に働きかけるものでした。

 しかし2008年頃から、メラノサイト以外の原因=『面』に着目したものが増え始めました。その最たる例が加齢による糖化で、肌の透明感を損なう黄ぐすみやにごりの原因になることが明らかにされました。

 この頃から、市場では『点』(紫外線によるシミ)と『面』(加齢などによる黄ぐすみやにごり)によるトータル(全方位)美白を謳ったものがトレンドになりました。そして、単にシミのない「白肌」ではなく、くすみがなく肌の内部から生まれるような「透明肌」が求められるようになりました。

 ちなみに、加齢に着目した美白アイテムは2000年代前半よりみられましたが、当初は単に美白ケアとエイジングケアという別々のものを複合的に訴求しているだけでした。

 しかし近年は、「なぜ歳をとると肌がくすんでみえるのか、なぜ透明感がなくなるのか?」というように、加齢による肌の変化と美白の関連性を内在的に解明し、顔全体の透明感を追求する傾向がみられます。つまり、今や美白ケアとエイジングケアは不可分の関係になっているといえます。

■面の多様化へ

 このように、美白ケアは『点』から『面』へと広がりをみせましたが、これに拍車をかけたのが、カネボウ化粧品のロドデノールによる白斑問題です。これ以降、主要各社は『点』にアプローチする新規美白有効成分の開発をトーンダウンさせ、肌全体の透明感=『面』に関わる様々な研究を加速させています。

 すなわち、「加齢」だけでなく、大気汚染やストレス等による「キメ」や「色ムラ」、「色素沈着」などに着目したアイテムが次々と登場し、『面』のアプローチが多様化してきています。

 また、白斑問題以前は美容液が美白市場の花形でしたが、近年は『面』のアプローチに対応するかのように、資生堂が「HAKU」より化粧水や乳液を発売するなど、対応アイテムも広がりをみせています。

 2016年も引き続き『点×面』がキーワードになると思いますが、そのなかでどんな画期的な新製品が登場するのか、注目したいと思います。
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松本 竜馬

TPCマーケティングリサーチ(株)マーケティングマネージャー

大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。社会学(ジェンダー/セクシュアリティ論)を専攻した後、マーケティング調査や化粧品・美容業界に興味を持ち、2007年に総合企画センター大阪に入社。以来、一貫して化粧品・美容領域に特化した市場調査や消費者調査を多数手掛けているほか、化粧品企業や広告代理店などからのマーケティング相談への支援も行っている。

http://www.tpc-osaka.com/

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