【週刊粧業2016年05月16日号5面にて掲載】
女性用育毛剤(育毛ケア)市場は2000年代以降、高齢化や女性の社会進出とも相まって順調な推移が続いています。
■通販の活性化
その背景として挙げられるのが、通販チャネルの活性化です。火付け役となったのははぴねすくらぶの「柑気楼」ですが、以降多くの企業が通販で女性用育毛剤を展開するようになりました。
では、なぜ通販なのでしょうか? よく指摘されるのが、女性が店頭で購入することへの抵抗感です。しかし、実際にはそうした女性は1割にも満たず、多くの女性は「便利さ」や「通販でしか購入できない」という理由で通販を選んでいます。
メーカーが通販を選ぶのは、女性用育毛剤が単品でも展開しやすく、その顧客層(50代以降)と新聞やテレビなどの媒体との親和性が高いためです。
■顧客の裾野拡大
同市場の拡大の背景としてもうひとつ挙げられるのが、2000年代後半以降の頭皮(スカルプ)ケアの浸透です。美しく健康な髪を育むためには頭皮ケアが必要だという訴求が呼び水となり、育毛剤はより身近な存在となりました。
これにより、顧客層は50代以降の女性から、予防的に使用する30代後半~40代のライトユーザーや、出産を機に髪の分け目やボリュームを気にする女性へと広がりをみせています。
こうした傾向を踏まえ、メーカーも近年は「育毛」を前面に打ち出すと「自分にはまだ早い」「薄毛と思われたくない」という意識を醸成して商品から遠のいてしまうのではないかという懸念から、なるべく直接的な表現は避け、育毛効果を付与しながらも、ハリやコシなど美容要素も謳う傾向がみられます。
■今後の成功の鍵
では、女性用育毛剤市場での今後の成功の鍵は何でしょうか?
それは、できる限り長く使ってもらうことです。そのことが高い効果実感につながり、さらに長期の使用へとつながります。この「使用期間」と「効果実感」の関係性は、鶏と卵の関係に似ていますが、そこに高い相関性があるのは確かです。
多くの企業では、育毛効果の実感のため4カ月~6カ月以上の継続的な使用を推奨しています。しかし、効果を実感するのに十分な期間を経ずに使用を止めてしまう女性が非常に多いのが実情です。
つまり問題なのは、「効果が得られないから短期間の使用に終わった」という点よりも、「効果を得るためには一定期間の使用が必要だ」という意識自体が弱く、メーカーの使用推奨期間が十分に守られていない点です。
したがって、このような短期使用者を防ぐためにはまず、そうした意識自体を変えていくような啓発活動が求められます。そして、例えば通販の定期購入制度のように、女性を一定期間つなぎとめ、より長く使ってもらうための仕組みづくりが何よりも重要であるといえるでしょう。