【週刊粧業2016年09月12日号4面にて掲載】
今回のコラムでは、化粧品における『鮮度』について考えてみたいと思います。
『鮮度』といえば、業界は違いますが真っ先に思い浮かべられるのがアサヒビールの「スーパードライ」です。同社は「鮮度は品質である」という考えのもと、生産~物流~営業までの全部門が連携した鮮度向上活動『フレッシュマネジメント』に取り組み、「スーパードライ」を一躍トップブランドへと導きました。そして現在も、同ブランドでは製造後3日以内の工場出荷を実現し、ブランドの強みとしています。
これに対して化粧品業界では従来、成分や機能、技術、安全性、製造方法、産地など、さまざまなこだわりや差別化ポイントがありますが、『鮮度』をウリにしたものはあまりありませんでした。
そのなかでも、ファンケルは古くから「食品には製造年月日があるのに、なぜ化粧品にはないのだろう?」という疑問のもと、包装に製造年月日を印字。新鮮さを保つための「フレッシュ期間」を設定し、顧客に『鮮度』という価値を提供してきました。このことが現在も同社の安心・安全性に対する信頼を支えています。
また、アプローチは全く異なりますが、資生堂が2014年と2015年に「TSUBAKI」から冬季・数量限定で販売した「オイルヌーヴォー」も特筆すべき商品です。
同商品は、『初摘み、採れたて、絞りたて!』をコンセプトに、9月のこの時期に長崎県五島列島の椿の実の収穫を解禁。それを1週間天日干しし、椿オイルの搾油を開始します。その後、椿オイルの新鮮さを保つため、フェリーの特別便と専用車をチャーターし工場に出荷。超高速ラインで製品化し、わずか3カ月余りで店頭に並べるスピードぶりで勝負しています。
実際にこの商品を手にとった方の多くは、その香りの良さに、素材や製造方法へのこだわりだけでは不可能な、『鮮度』(初摘み、採れたて、絞りたて)という他社にはないベネフィットを感じているでしょう。
そしてもうひとつ、忘れてはならないのが、ノンシリコンブームの火付け役であるジャパンゲートウェイが「生シャンプー」(同社の登録商標)として発売した「レヴール フレッシュール」です。同商品は、独自の真空容器を採用し、成分の酸化を防止。
これにより、従来難しかった成分の配合を実現し、大きな話題となりました。同商品を契機に、今後「生」コスメブームが到来するかはまだ定かではありませんが、化粧品業界に「生という鮮度」を新たに提案しているのは確かです。
上記の企業・商品のアプローチはそれぞれ異なりますが、顧客に『鮮度』という新しいベネフィットを提供している点は共通しています。これは「言うは易く行うは難し」ですが、成熟市場における新しい差別化ポイントとして一考してみてはいかがでしょうか?