【週刊粧業2020年01月27日号6面にて掲載】
化粧品業界に異業種からの参入組が目立つようになったのは、1990年代に酒や食品メーカーが参入してきた頃だったように思う。当時、そういう会社から発売された化粧品は、本業で培った技術で開発された独自の美容成分を訴求していた。
その後も新規参入組は後を絶たないが、最近は少し様子が違う。そもそも独自成分があって参入しているわけではないので、原料や成分にあまり差が打ち出せなくなっている。その意味では没個性な化粧品ばかり増えているように見える。
もちろん販売方法や使用方法、容器まで、各社独自の努力やこだわりに対する訴求もないわけではない。しかしモノづくりでオリジナル性を強く打ち出せないのは、歯がゆい面もあるのではないか?
何より、現在の消費者はインターネット、雑誌、店舗などさまざまな方法で情報を入手しており、商品を見る目は年々厳しくなっている。そのように目が肥えた消費者に対して、他社と横並びの化粧品を提案しても、果たしてファンになってもらえるのだろうかという疑問も沸く。
せめて一つくらい、自社だけのこだわり、個性を強く打ち出すべきではないか? まったく違う業界からの新規参入だからこそ、新鮮な視点で化粧品業界の固定観念を打ち破るような、キラリと光る化粧品開発を期待したい。理想は自社で原料開発から独自に行えることだろう。
しかし、そこまでハードルを上げなくても、個性を演出する方法はいろいろある。例えば「お手入れの5分間を幸せ感のある香りで包み込む」化粧品など香りに徹底してこだわったり、季節で微妙に調合を変えて「シーズンにふさわしい香り」などを演出するのも面白い。
またテクスチャーを追求し「マシュマロがとけるような感覚を肌で再現」と言えるような、これまでにない感触もSNSで話題を呼びそうだ。あるいは「スパチュラで肌にのばすという化粧品」として、手が汚れない利便性と清潔さをアピールするユニークな使用方法でも良い。
他にも、使用手順を逆転させ、洗顔後すぐにクリームをつける「先行乳液」ならぬ「先行クリーム」のスキンケアや、顔も身体もケアできる全身用3ステップケアなども考えられるだろう。
こだわりは、中身だけとは限らない。最近は容器に予算をかけない会社も多くなっているが、逆にお手入れが楽しくなるようなメッセージ付きの容器や、ワンタッチですべて開閉できる容器というのも面白い魅力になるだろう。
ワンプッシュでパックが塗れるような飛び出す容器や、ゲルや乳液を刷毛付き容器にいれる、ということもできるかもしれない。何か一つでいい、他社が思いつかないような、自社ならではの経験を活かしたアイデアがきっとあるはずだ。
同時に忘れてならないのは、どれほど魅力的なこだわりや個性も、そもそものブランドコンセプトに紐づいていなければ価値はないということだ。化粧品は、どんな女性をどんな風にキレイにするのか、という自社の考え方やコンセプトを実現するためのものである。コンセプトがないところに、こだわりも個性も存在しない。
「お手入れの5分間を幸せ感のある香りで包み込む」化粧品も、「仕事に家事に忙しい女性の肌と心に5分間のやすらぎを与えたい」など背景となるコンセプトがなければ、単なるアイデアで終わってしまう。
まずは核となるコンセプトを固め、それを軸にした個性、こだわりをアピールしていくことが大切だと思う。
各社がコンセプトや個性を打ち出して、他社との差別化を競い合うようになれば、消費者も化粧品を価格ではなくこだわりで選ぶようになり、各ブランドへのファン化が進んで、化粧品業界全体の活性化にもつながると思う。ぜひ、各社ともそれぞれ個性がキラリと光る化粧品づくりに挑戦してほしい。