【週刊粧業2017年4月24日号11面にて掲載】
先日、銀座の大型商業施設「GINZA SIX」がオープンしました。私もオープンに先立ち行われたプレス内覧会に伺ってきましたが、施設概要や詳細はメディアにお任せするとして、とにかく大規模なプロジェクトであり、施設の完成度には圧巻でした。
化粧品売場は全店舗の3分の1がキャビン(個室)を備えていたり、同フロアで加圧プログラムやインナービューティを提案するなど、ここに来ないと体感できない新たな『体験』を提供しているのは、「モノ成熟時代」らしい特筆すべき点でしょう。
確かに「GINZA SIX」の各フロアに立った時、私自身、ワクワクする感覚や特別感、高揚感を覚えました。ネット消費に対抗しうるリアル店舗ならではの五感に訴える魅力があり、消費者が「体感」「体験」を最大限にできる点を全面的に打ち出している印象を受けました。
現在、物販ではリアル店舗の存在が見直され「リアル回帰」が進んでいると一部の消費財ではいわれています。ネットやSNSを経由して情報が大量に入るようになってきたことによる情報過多な状況に疲弊している人が増えたのが一因ではないかという説があります。
弊社が実施する美容関心層をターゲットとする調査やグループインタビューでも、WebやSNSの広告等で情報の選択肢が多すぎて「かえってモノが選びきれない」「ネットであれこれリサーチするより店頭に行ってカウンセリングを受けたほうが早い」というコメントが少なくないのが事実です。
また、こだわりの強い美容関心層ほど、自分でじかに見て触れて感じて「自分の感覚」に合うものを選択するというステップは省きません。
他人の意見を参考にはすれど、「最終的には自分で判断する」ことが大事なのです。その「最終的な判断」の場が店頭である消費者は、特に中間価格帯以上の化粧品の場合少なくなく、リアル店舗に来店する必然性が高いのがコスメの特徴と言えます。
とはいえ、「ネット&SNS疲れ」の現代消費者が増えてはいるものの、店頭に足を運ぶきっかけを作っているのがネット・SNSによる情報なのも事実です。
こうしたネット・SNSとリアルが融合するO2Oは今や当たり前のマーケティング手法ですが、おそらくここの手法はリアルを体験した消費者に「伝える楽しさ」をもたらすことで、活性化しているのです。
消費者は店頭に「モノ」だけを買いに行くのではなく、他人に『伝えたくなる』体験・体感という「コト」を買いに行く時代です。自身が体験したことを「伝えたい」と発信者が高揚感を抱く取り組みが、今後のO2O施策には必要で求められていくことでしょう。