【週刊粧業2020年1月27日11面にて掲載】
年が明け、日本にとっても重要な2020年が到来した。その冒頭にやってきたのが中国からのインバウンドシーズン「春節」である。今年は1月25日と例年より早めの春節となったが、中国消費者はどんな日本の商品を求めてやってきたのだろうか?
トレンドExpressでは訪日中国人観光客のショッピングニーズを把握するために、クチコミデータバンク「トレンドViewer」の「買いたい」ランキングから、2019年7月3日から12月24日までに中国消費者がSNS上で「買いたい」とつぶやいた商品名を集計し、同年下半期の人気商品ランキングを作成した。
1位はエフティ資生堂の「薬用ハンドエッセンス」だった。秋から冬は乾燥が気になる時期のため、1位以外の上位もリップなどケア商品がランクインした。
ランキングで目を引いたのが13位の「H2Oウォータークリーム」(昭和新山熊牧場)だ。
同品は、見た目はごく普通の白いクリームだが、塗り伸ばしていると皮膚上でクリームが液体に変わり、それが肌に吸収されることで高い保水効果を有するのが強みだ。
「昭和新山熊牧場」という販売元も特徴的だ。観光地のクマ牧場で販売されている北海道限定のスキンケアクリームなのである(ネット販売あり)。
同品が人気となる背景には中国現地のウォータークリームブームがある。
以前から「出水霜」や「爆水霜」と呼ばれていたが、2018年半ばごろからネット上での露出が高まっている。中でも国内ブランドのAlobonや米国のキールズの商品が人気を集めている。
トレンドViewerのクチコミ推移では「H2Oウォータークリーム」も、中国でのブームに乗るかのように、19年に入ってから「買いたい」クチコミ件数が増加した。同年11月以降は週次ランキングのトップ10を維持するまでに成長している。
ご存知の通り、中国では「乾燥肌」に悩む女性は多い。寒さの最も厳しい東北地方では日中でも氷点下10℃前後、最低気温も氷点下20℃はざらだ。一方の室内もオンドルなどの影響で25℃以上となり乾燥しやすい環境にある。また、上海などの南方もエアコンなどで乾燥しやすく、常に保水を心がけている。ある意味、女性が冬場に受ける肌ダメージは日本以上かもしれない。
中国で人気のSNS「小紅書(RED)」のクチコミでは、選択ポイントとなる「保湿力の高さ」に加え、「使い心地がさわやか」「べとべとしない」といったポジティブな使用感が並んでいる。
さらに、日本の外国人訪日観光における勝ち組である「北海道でしか手に入らない」という希少性も、中国消費者の購買意欲を高める結果をもたらしている様子だ。
中国消費者の悩みを解決できる高い商品パフォーマンスと「日本の特定の場所でしか手に入らない」というプレミア感。そこには日本の課題である、インバウンドを地方振興へとつなげるヒントが見えるように感じられる。