第12回 メイク技術は〇〇から?

【週刊粧業2020年2月24日18面にて掲載】

 中国のコスメ業界で拡大しているのがメークアップ市場だ。しかしメークで自分自身の「美」を引き立たせるのには、ある程度の技術が必要となる。そんな中国消費者のメーク技術の情報源を探ると、意外な存在が見えてきた。

 昨今、日本でもKOLの中国風メークが「チャイボーグ」などと呼ばれ、注目されている。

 では中国の一般の消費者はどこからメークノウハウの情報を得ているのだろうか?

 トレンドExpressが19年に行った中国消費者のメーク意識を調べるクチコミ調査で中国消費者のメーク情報源について探ってみた。

 「メイク×参考」という調査(グラフ)では、中国で人気の体験共有アプリ「小紅書」が4位、また「スター・アイドル」が5位と、アプリやアイドルを参考にする女性が多いようだ。

 そんな中、私が特に気になったのは10位にランクインした「代購(ソーシャルバイヤー)」である。

 現在、日中間に関わらず、ソーシャルバイヤーが中国の消費者にむけて人気商品の代理購入や情報の仲介を行っているが、どうやらメークの世界でも彼女たちは活躍しているようだ。

 実は、現代の中国で女性が自由にメークやスキンケアを楽しめるようになったのは、改革開放、特に物資が充実しはじめた90年代に入ってからで、わずか30年程度の歴史しかない。日本に比べ、中国は現代メークアップ文化の蓄積がまだ乏しい状況だ。

 さらに、ファッション誌やメーク情報メディアが成熟する前に、中国ではSNS社会となり、KOLが登場した。しかしながら、その情報は、中国国外で発信されている専門性の高い美容情報とは異なる。

 そこで、海外の成熟したメークノウハウなどを収集する先として、現地在住で現地の消費者事情に詳しいソーシャルバイヤーがクローズアップされているのである。

 さて、気になるのは中国の新型肺炎の状況である。

 中国国内の調査会社「青眼情報」が湖北省以外の国内各地の消費者1000人を対象に行った春節期間中の化粧品利用動向調査では、春節中、85%が「毎日スキンケア商品を利用している」のに対し、「メイク商品を毎日使っている」と回答した消費者はわずか9%だった。

 感染を防ぐために外出を控え、自宅で過ごすことが求められたためだ。外で人に会わないのであればメークする必要もないというわけである。

 これだけ見れば、中国のメークニーズが縮小していくのではないかとの不安もある。

 しかし、この新型肺炎が終息となったあかつきには、中国の消費者たちは鬱屈した気持ちから解放され、これまで以上に自分を美しく飾ろうとすることも考えられる。

 今後より競争激化が見込まれる中国のメークアップ市場。生き残りには、中国の女性たちが頼りにする情報源を味方にできるかがカギになるかもしれない。
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森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

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