【週刊粧業2016年5月2日号4面にて掲載】
今回は百貨店のインバウンド戦略についてご紹介したいと思います。
・三越銀座店
同店の2014年10月からの1年間の化粧品売場の売上げは前年比165%となり、インバウンドだけをみると売上は同6.5倍、総売上に占めるシェアは同4倍の36%となっています。同店を運営する三越伊勢丹では、各ブランドのベストセラーを集積したインバウンドカタログを作成し、来店時や現地の旅行代理店で配布しています。
このカタログは単なるカタログとしてではなく、販売員のインバウンド接客ツールとしても活用でき、売上に大きく貢献したようです。
・松屋銀座店
同店では、2015年9月30日に、インバウンド需要が高い「資生堂」(14年10月~15年9月までの売上前年比約8倍)、「クレ・ド・ポー ボーテ(同約13倍)」「SK₋Ⅱ」(同約10倍)と、同店舗初導入となる「DHC」の4ブランドを集積した「ツーリスト ショップ アンド ラウンジ」を、第1駐車場2階に開設しました。
「クレ・ド・ポー ボーテ」は美容液、「SK₋Ⅱ」はマスク、「SHISEIDO」はメイクアップ製品、「DHC」はリップ類が売れ筋となっています。今後は、買いまわりチケットの作成やノベルティの用意などを行うことで、他の店舗との差別化を図る考えです。
また、「ツーリスト ショップアンド ラウンジ」のオープンにより、日本人顧客の接客がスムーズに進むという効果も生まれているようです。
・京王百貨店新宿店
同店では、訪日外国人観光客向けに、ジャパンコスメをクローズアップしたフライヤー(チラシ)を作成し、同店の5%割引券を付けて京王プラザホテルのカウンターに置くことで、売上を伸ばしています。
2016年2月には、インバウンド向けイベントを実施、福袋と新春キットのリーフレットを配布するとともに、売れ筋や人気商品のみが掲載された冊子をつくり、訪日外国人観光客へのアプローチを強化しています。
・小田急百貨店新宿店
同店では、2015年9月、本館1階の特設会場において、訪日外国人観光客の取り込みを狙った「SK₋Ⅱ」のメガイベント「美肌チェンジ・ミュージアム」を開催しました。
このイベントでは主にスキンケアを訴求して、訪日外国人観光客キットを販売した他、「SK₋Ⅱ フェイシャル トリートメント エッセンス」の小田急百貨店限定ボトルを製作販売しました。結果は大盛況で、「SK₋Ⅱ」の売上は2015年9月が前年比160%、2015年10月が前年比180%と大きく実績を伸ばしました。
おわりに、化粧品の消費税免税(タックスフリー)の効果によるインバウンド景気に沸く百貨店ですが、2016年1月には三越銀座店8階に「ジャパン・デューティーフリー・ギンザ」、2016年3月には東急プラザ銀座に「ロッテ免税店JAPAN銀座店」といったデューティーフリーの空港型市中免税店がオープンしており、今後はデューティーフリーの市中免税店との差別化策が必要になると思われます。
また、訪日外国人観光客が増加するにつれて問題になるのが、日本人顧客への対応です。訪日外国人観光客の増加によって日本人顧客の買物環境が損なわれているケースもあり、松屋銀座店では「ツーリスト ショップ アンド ラウンジ」の開設により、売場で日本人がゆっくり商品を選ぶことが出来る環境を取り戻そうとしております。
今後は、日本人顧客への快適な買物環境を維持しつつ、訪日外国人観光客への快適な買物環境を実現させる仕組みづくりが必要となるのではないでしょうか。