【週刊粧業2016年7月18日14面にて掲載】
今回は毛髪業のアジア戦略についてご紹介したいと思います。
日本の毛髪業(かつら・増毛・育毛事業などを行う業界)市場は、今後大きな成長は望めないため、現在、大手企業を中心に消費市場として急成長を続けるアジア市場の開拓に注力する企業が増加しています。
■アートネイチャー
アートネイチャーは、2011年の中国現地法人のARTNATURE(SHANGHAI) INC.の設立を皮切りに、2012年にANシンガポール社、2014年にマレーシアにANマレーシア社、2015年にANタイランド社を設立するなど、積極的な海外展開を進めています。
アジアにおいては女性用既製品かつら「ジュリア・オージェ」ブランドで16店舗(中国12、マレーシア2、タイ1、シンガポール1)展開しており、国別ではシンガポール、マレーシアが好調です。
シンガポールはアジアの中心で情報発信地であり、マーケットとしては大きくないものの、ファッションなどトレンドに関する情報が周辺国に伝播していくため影響力は非常に大きいことから、シンガポールでの成功が他の東南アジアへの進出の足がかりになると見ています。
今後は、中国、シンガポール、タイ、マレーシアにおいて、ブランドの浸透と地域に根差した販売施策によって潜在需要の掘り起こしを行い、業容の拡大に取組むとしています。
■アデランス
アデランスは、1990年のアデランス台湾社設立を皮切りに、現在、台湾、シンガポール、中国の3カ国で事業を展開しています。これらの国では、日本国内同様に相談からアフターケアまでのサービスを行い、男女オーダーメイドかつら及び女性用既製品かつらの販売を行っています。
同社のアジアの販売拠点は、2016年3月末現在で、台湾(1990年進出/全12店舗)、中国(2005年進出/全19店舗)、シンガポール(2002年進出/全7店舗)となっています。
台湾では、2015年6月に旗艦店を移転リニューアルオープンするとともに現地のニーズに合わせたアジア向けかつら「AHシリーズ」を発売、商品ラインアップの充実とスタッフ教育の強化を図り、2018年まで20店舗の出店を目指しています。
今後はかつらを中心としたヘアソリューション事業の確立、中国での成長スピードの加速、ASEAN地域での拠点開設に取り組んでいくとしています。
■スヴェンソン
スヴェンソンは、中国現地法人の海姿美森友制品有限公司を設立し、2008年に中国市場に参入しました。中国では、20~30代の富裕層をターゲットに開発したブランド「LUKUL」を立ち上げています。
同ブランドは、上海の旗艦店でのブランディングを図り、一時期は25店舗(直営店7店舗、加盟店18店舗)にまで拡大しましたが、現在は9店舗(直営店1店舗、加盟店8店舗)と効率重視の展開に転換しています。
同社では、これからはアジアの時代と捉え、中国以外の地域への進出も視野に入れています。これまでは生産拠点として着目されてきたインドネシアやタイ、台湾などは、消費市場としてビジネスチャンスがあり、市場という目線でこれらの国・地域をみていく必要があるとしています。
おわりに、アジアの女性の中では、日系美容室や日系化粧品など、日本のサービスや製品の人気は高いです。
また、経済成長によって日本の企業が展開する高価格帯商品を購買できる力を持つ消費者も増加傾向にありますので、日本の毛髪業が販売するかつらについても、現地のニーズに合致したマーケティング戦略を推進することが出来れば、大きく伸びる可能性があると思います。