第28回 化粧品原料メーカー・商社のアジア戦略②

【週刊粧業2016年9月5日号4面にて掲載】

 今回は前回に引き続き化粧品原料メーカー・商社のアジア戦略についてご紹介したいと思います。

■日光ケミカルズ

 同社は、取引の増加を受けて生産拠点を海外に拡大し、世界中の化粧品メーカーからの受託生産を推進し、グローバルな視野で生産、物流、販売システムを構築しており、アライアンスパートナー企業ネットワークは、世界48カ国、うちアジア11カ国・地域に及んでいます。

 同社としては、初の海外営業拠点として、2007年に日光化学貿易(上海)有限公司を設立し、中国市場で化粧品ビジネスを展開する顧客に種々の原料を提供している他、2009年に設立したシンガポール工場は周辺地域の豊富なパーム油、ヤシ油などを活用して、安全で品質の高い界面活性剤を製造し、リーズナブルな価格で安定供給しています。

 これら周辺国ではハラールやコーシャなどの認証は化粧品においても必要とされていることから、ハラールとコーシャの認証を取得し、2015年1月から、これらの規制がある国々へ向けた原料開発や近隣化学企業との協力も積極的に行い、アジア地域、さらには欧米市場などへの製品提供を目指しています。

■マツモト交商

 同社は、2014年4月に、中国上海に化粧品原料販売会社「松本交商化工(上海)有限公司」を設立することでアジア戦略をスタートさせています。

 同社の中国拠点は、中国国内の化粧品原料の販売を目的に同社の一層のグローバル化に向けた戦略を反映したものとなっています。さらに2015年10月にはベトナム・ホーチミンに「MTAV VIETNAM CO.,LTD」を設立し、ASEAN地域での化粧品原料供給を開始しています。

 ASEAN地域では、インドネシア・タイ・ベトナムなどへ国内メーカー化粧品原料を中心として輸出販売しており、それぞれの地域で化粧品原料&処方セミナーの開催や展示会への出展などの活動を行っています。

 おわりに
 
 中国やASEANをはじめとするアジア地域では経済成長により中間層が増加したことから、アジアを次の成長ドライバーとして捉え、アジア市場に進出する外資・日系メーカー、現地ローカルメーカーを顧客と想定し、積極的な海外展開を進める原料メーカーや商社が増加しています。

 現在、世界には約16億人以上のイスラム教徒(ムスリム)が存在し、全世界のムスリム人口の6割をアジア太平洋地域が占めると言われています。2030年にはムスリムが22億人まで拡大するとの予測もあり、近年、ムスリムを対象とした「ハラール」商品への関心が世界的に高まってきています。

 これらのことから、豚をはじめとした使用禁止成分を使わない化粧品原料としてハラールへの対応を行うなど、それぞれの地域に応じた化粧品原料供給体制の整備は必要となりますが、日本企業の生産する化粧品原料は世界的に評価が高いことから、今後、急成長を続けるアジア化粧品市場の原料分野における日本のプレゼンスはますます高くなっていくものと思います。
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浅井潤司

(株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

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