第36回 温浴施設のアジア展開 ~極楽湯ホールディングスの事例~

【週刊粧業2017年5月1日号5面にて掲載】

 今回は温浴施設のアジア展開事例として、極楽湯ホールディングスの中国展開をご紹介したいと思います。

出店までの経緯

 同社では成熟する国内市場の状況を考え、今後の事業拡大には、大きな可能性を持つ海外市場への挑戦が必要であると考え海外プロジェクトチームを立ち上げ、候補地選定のために現地調査を重ねました。

 同社で現地調査を行ったところ、中国は成長著しく人口は多いものの、一般家庭の多くはシャワーのみで浴槽が無く、街の銭湯も決して衛生的とは言えないものであったため、 『きれいなお風呂につかる』日本式のスーパー銭湯にビジネスチャンスがあると考え、中国出店を決定しました。そして、2011年2月、極楽湯(上海)沐浴有限公司(現 極楽湯(上海)沐浴股份有限公司)を設立しました。

中国でのビジネスモデル

 2013年2月に上海市に直営店「極楽湯碧雲温泉館」をオープン後、2015年2月に上海市に直営店「極楽湯金沙江温泉館」を、2016年に武漢市に直営店「極楽湯金銀潭温泉館」をそれぞれオープンし、現在では直営店3店舗を展開しています。

 2015年度(2015年4月~2016年3月)の売上高は3230百万円(前期比107.4%増)、営業利益は144百万円(前期比7.1%増)と順調に事業は成長しています。

 中国での店舗は、岩盤浴、和食メインのレストラン、VIPルーム、ネイルサロンやマージャン室に加え、子供たちの遊ぶスペースなど、風呂以外の施設に十分なスペースを確保したため、建物の広さは、日本の平均的な店舗の約6倍の1万2000㎡という巨大なものになっており、入館料は大人138元(約2200円)と日本と比較すると2倍以上という価格設定になっています。

 店舗では、化粧品や小物、浴衣などの衣類、日本のアニメ関連商品の販売コーナーなども設置、「総合的なエンターテインメント施設を備えたテーマパーク」とすることで付加価値を付けています。

 また、中国ではミネラル成分の多い硬水のため、なめらかな感覚のある日本の軟水の質とはほど遠いため、同社では、硬水を軟水に変える特殊な濾過装置を日本から導入しています。

今後の戦略

 同社では3号店に続く直営店の出店に向けて準備を進めて行くとともに、巨大市場である中国では「極楽湯ブランド」の確立とスピーディーな浸透を図ることが必要であると考え、すでに中国現地企業3社と温浴施設をフランチャイズ展開することで合意しています。

 今後は、海外企業との連携の強化やフランチャイズ事業を含めた様々な事業展開に取り組んでいくことで、店舗網を拡大していく計画です。

おわりに

 近年、日本の習慣や文化を取り込んだサービス業が中国をはじめとするアジアで支持を集めています。

 今後、極楽湯ホールディングスのように市場の変化やニーズにうまく対応した日本式サービス業の需要は高くなっていくと思いますので、アジアにおける日本式温浴施設の需要は増加すると思います。
この記事のお問い合わせはこちら

浅井潤司

(株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

一覧に戻る
ホーム > 連載コラム > 第36回 温浴施設のアジア展開 ~極楽湯ホールディングスの事例~

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop