第45回 ユニリーバグループのアジア最新情報

【週刊粧業2018年3月5日号4面にて掲載】

■2017年決算状況

 ユニリーバの2017年決算は、売上高は1.9増の537億1500万ユーロ、営業利益は13.5%増の88億5700万ユーロ、純利益は16.9%増の64億8600万ユーロとなりました。

 セグメント別では、化粧品を含むパーソナルケアが売上高で2.6%増の206億9700万ユーロ、地域別ではアジア・アフリカが売上高で3.7%増の232億6600万ユーロとなっており、アジア(アフリカ含む)でのパーソナルケアが同社の業績を牽引している状態となっています。

 以下では、2017年のアジアの各地域での特徴的なトピックを取り上げたいと思います。

■韓国

 2017年9月、韓国の新興スキンケアメーカー「カバーコリア」を総額22億7000万ユーロでゴールドマンサックスなど投資会社2社から買収することで合意しました。カバーコリアの創業は1999年と新しいですが2016年売上高は3億2100万ユーロとここ5年間で急成長しています。

 カバーコリアは業務用化粧品の製造販売からスタートしており、代表的なブランドはエイジングケアスキンケア「AHC」です。ユニリーバでは、この買収をフックに、韓国市場や韓国の化粧品の人気が高いASEAN市場におけるプレゼンス向上を目指しています。

■インドネシア

 2017年9月、ユニリーバがインドで販売しているメイクアップブランド「ラクメ」の販売を開始しました。
夜まで持つ大胆な色彩が特徴の口紅、アイシャドー、ファンデーションなどを取り揃えており、2017年9月のプレス発表会では米国の女優『キム・カーダシアン』のメイクアップアーティストを招いて発売式典を催し話題となりました。

■バングラデシュ

 バングラデシュでは、インドの成功事例を横展開し、小分けの洗剤の販売や、零細商店に商品のアピール方法などを細かく指導するなどの取り組みの他、農村女性を活用し、各地で衛生管理の啓蒙ビデオの上映やサンプル配布を代行してもらう試みを始めました。

 この取り組みでは、新興国向けマーケティング支援を手掛けるシンガポールのベンチャー企業であるネクストビリオン社の力を借りています。

 ユニリーバではASEANのハブとなるシンガポールのベンチャー企業との連携を重視して2017年2月にシンガポールで共同作業スペースを開設しており、インターネット関連の企業を中心に40社を入所させており、今後はこれらのベンチャー企業との連携を図っていく予定です。

■インド

 2016年に伝統医学アーユルヴェーダに基づく化粧品ブランド「インドゥレカ」を約57億円で買収し、100mL700円台のヘアオイルなど高価格品を展開しています。経済が成長し、豊かな層が厚みを増すインドでは、今後高級ブランドが有望であると見ており、アーユルヴェーダをキーワードにした高価格帯ブランドの育成を目指しています。

おわりに

 ユニリーバのアジア戦略は、製品と営業体制のローカライズ化によるプレゼンス向上が基本戦略ですが、今後は、その地域の独自性を活かしたハイエンドブランドの育成と、アジア新興市場発の世界的メガブランドを育成に注力するものと思われます。
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浅井潤司

(株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

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