連載コラム

矢野経済研究所 アジア美容マーケットニュース

2020.06.18

第46回 「QBハウス」の海外展開

執筆者:浅井潤司 (株)矢野経済研究所主席研究員

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【週刊粧業2018年4月2日号6面にて掲載】

 カット特化型(ジャストカット)サロン最大手の「QBハウス」を展開しているキュービーネットホールディングスの海外展開が注目を集めています。そこで、今回は「QBハウス」の海外展開の現状とポイントについて見ていこうと思います。

海外出店状況

 アジアでは2002年のシンガポール出店をはじめとして、香港(2005年)と台湾(2012年)へも出店しています。また、2017年6月には、米国現地法人が欧米初進出1号店として、「MIDTOWN EAST店」をニューヨークのグランドセントラル駅近くにオープンするなど、海外事業を積極的に推進しています。

 2017年6月末時点の海外店舗数は4カ国計117店舗です。国別では、シンガポール35店舗、香港57店舗、台湾24店舗、アメリカ合衆国1店舗となっています。

 なお、2017年6月末時点の海外来客者数は3117千人(香港1889千人・シンガポール916千人・台湾312千人)となっています。

海外展開のポイント①『シェル型店舗の開発』

 海外では、日本では法規制が厳しく提供できない店舗を開発して展開しています。同社では「シェル型」店舗と呼んでいますが、これは1坪の広さに1席のみが置かれて壁に囲われた組み立て式の貝型の店舗のことです。

 オフィスビル内の休憩スペースやショッピングモールの小さな空きスペースなどに設置されており、空いた時間で髪を切ってしまいたい仕事中や買い物中の客に利用されています。

 特に賃料の高いシンガポールや香港では、出店費用削減に貢献する店舗形態であり、商業施設を運営するディベロッパー側から見ても、エレベータホール前や通路などの遊休スペースの有効活用のひとつとなっており、出店要請が多くなっています。

海外展開のポイント②『ジャパンクオリティの確保』

 『短時間×均一料金×ヘアカット特化』というサロン業態は同社が世界で初めてですが、アジアの現地では、現地の事業者が模倣店舗を多く出店しています。チェーン展開している有力現地サロンとしては、シンガポールには「EC HOUSE」、台湾には「CQ2」というサロンがあります。

 これらの模倣店舗に対して、同社では、「日本のクオリティ」を海外でも確保することに注力しています。日本から海外進出するサービス業は、フランチャイズ方式で展開するケースが多いですが、同社の海外店舗は全て直営店として運営しており、日本人スタイリストがトレーナーとして現地に赴任して現地のスタイリストをトレーニングする他、各国の幹部候補社員を日本に呼びマネジメント研修を行うなど、現地スタッフのカット技術、サービス、マネジメントを日本と同一水準に保つカリキュラムを整えています。

 おわりに

 同社としては、海外事業で培った『シェル型店舗』と『ジャパンクオリティの確保』というノウハウをベースに、アジアにおいては既に進出している香港、シンガポール、台湾に留まることなく積極的に新市場を開拓していくとしていますので、今後の同社の動向には注目していく必要があると思います。

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プロフィール

執筆者:浅井潤司 (株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

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