第49回 7月1日から中国関税再調整、化粧品の関税も引き下げに

【週刊粧業2018年7月16日号5面にて掲載】

 2018年5月30日、中国国務院(中央政府)関税税則委員会は2018年7月1日以降の新たな輸入関税率についての正式な通達を出しました。

 今回は7月1日に施行された中国関税の再調整について見ていきたいと思います。

■引き下げ対象の商品分類と主な引き下げ対象

 今回の関税再調整により引き下げとなったとなったのは関税番号ベースで1449品目が対象で、平均税率を15.7%から6.9%に引き下げました。平均の下げ幅は55.9%となります。

 主だったところで行きますとアパレル・スポーツ用品が15.9%→7.1%(▲8.8%)、家電製品が20.5%→8%(▲12.5%)、自動車が25%→15%(▲10.0%)、そしてスキンケア・化粧品・一部の医薬健康商品が8.4%→2.9%(▲5.5%)となりました。

 この背景には、2018年4月10日から始まったボアオ・アジア・フォーラムの開幕演説において、中国の習近平国家主席が「10の経済開放施策」を発表したことがあると思います。

■越境ECの発展が契機に

 中国では、海外経験を有する中国人が増加したことによって海外商品のニーズが増加しており、こうしたニーズによって越境ECシステムが発展しています。越境ECの発展により、中国の消費者が海外の商品を購入しやすくなった半面、中国政府は越境ECで売買される商品から税金が取りづらくなってきました。

 これまでは、越境ECの法整備を進めることで市場管理進めてきました。しかし今回は、同委員会が「広範囲に関税を引き下げることで消費者の生活需要を満たし、消費財分野におけるサプライサイドの構造改革を進める」と説明している通り、正規輸入品の関税を見直すことで、海外の商品のハードルを下げ、中国国内で海外製品を販売しやすくし、中国国内の流通と消費を活性化させることによって経済を成長させる方針としたようです。

■おわりに

 弊社の中国人スタッフに聞いたところ「海外商品が高価格になっている背景には中国国内の流通コストが高く、それが小売価格に上乗せされている」という見解を持つ中国流通関係者も多いとのことです。

 今回の関税引き下げ後に政府の思い通りの結果が得られるのかどうかは不透明ですが、日本の化粧品メーカーにとっては輸出拡大の追い風の1つになることは間違いなく、今後の動向を見守っていきたいと思います。
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浅井潤司

(株)矢野経済研究所主席研究員

2000年に矢野経済研究所に入社後、主にビューティー・リラクゼーション業界の市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、中国市場進出支援、販路開拓支援、新規事業支援、地域振興・産業振興支援などのコンサルティング業務も手がけている。

http://www.yano.co.jp/asean_india/index.php

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