第3回 レインボー消費

【週刊粧業2015年12月号にて掲載】

 『レインボー消費』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 これは、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)を含む 性的マイノリティによる商品・サービスの消費を表す言葉として、 電通が名付けたものです。もう少し詳しく紹介する前に、まずLGBT層を巡る最近の大きな出来事について触れておきましょう。

■LGBT公認の動き
 
 2015年6月、米国の連邦最高裁判所は「同性婚の権利は憲法で保障されている」として、全ての州で合法であるとする画期的な判決を下しました。もっとも、米国ではLGBTに対する社会的配慮や支援はかなり以前から広がっています。

 いまやグーグルやウォ ルマートといった多くの大手企業がLGBT層への差別禁止を表明するなど、『LGBTフレンドリー』を打ち出さないと顧客からの支持が得られない状況とさえ言われています。

 これに対して日本での状況はどうでしょうか?

 2015年4月に東京都渋谷区で『同性パートナーシップ条例』が成立したことは記憶に新しいですが、残念ながら全国的にみればLGBT層を巡る公的整備はかなり遅れているといえるでしょう。しかし近年、LGBT層に配慮したサービスを提供したり権利尊重を明確に打ち出す一般企業が、徐々に増えてきています。
 
 例えば化粧品企業では、資生堂が社員の行動基準として、性的指向による差別を行わないことを明記しています。また、外資系企業では、ラッシュが『LGBT支援宣言』として日本でもキャンペーン活動を展開しているほか、ユニリーバも「クリア」のウェブCMで同性カップルを起用するなどしています。

■レインボーコスメ
 
 こうした中、近年にわかに注目を浴びているのが、最初に触れたレインボー消費です。電通が2015年4月に発表した『LGBT調査2015』によると、日本でLGBT層に該当する人は7.6%で、同層による商品・サービスの市場規模は5. 94兆円となっています。このうち化粧品・理美容品だけに絞ってみると、その市場規模は1726億円という推計がでています。

 LGBT層に対する国内の理解がもっと深まれば、同層に配慮・支援した化粧品や美容サービスも増え、市場規模もさらに拡大することが期待できます。
 
 例えば、化粧品OEMメーカーのリブライフは先日、新たな市場開拓の『決め手』としてLGBT市場向け製品の企画と提案を行うことを発表しましたが、今後の動向に注目したいところです。
 
 東京オリンピックを迎える2020年には、企業のグローバル化はますます進み、日本の化粧品業界でも今よりもっとレインボー消費の取り込みを意識した活動が活発になり、『レインボーコスメ』という新たなカテゴリーも生まれているかもしれません。
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松本 竜馬

TPCマーケティングリサーチ(株)マーケティングマネージャー

大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。社会学(ジェンダー/セクシュアリティ論)を専攻した後、マーケティング調査や化粧品・美容業界に興味を持ち、2007年に総合企画センター大阪に入社。以来、一貫して化粧品・美容領域に特化した市場調査や消費者調査を多数手掛けているほか、化粧品企業や広告代理店などからのマーケティング相談への支援も行っている。

http://www.tpc-osaka.com/

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