第28回 「地域の健康支え続けて130年」(バーテル ドラッグ ジョージ D.バーテル会長)

【週刊粧業2020年8月3日号4面にて掲載】

 シアトルを中心に68店を展開している「バーテル ドラッグ」は、アメリカで最も歴史のある家族経営のドラッグストアチェーンである。あのウォルグリーンの創業が1901年だが、同社はそれよりも旧い1890年である。

 今年創業130年の老舗ドラッグストアである。

 20年近く前、シアトル南部にある同社本部で、ジョージ D.バーテル社長兼CEOにインタビューした。同社は彼の祖父、ジョージ H.バーテル シニアが創業し、父、ジョージ H.バーテル ジュニアがその後を継いで、彼が3代目社長となる。

 バーテル氏は2015年までCEOを務めたが、その後、バーテル一族以外からのCEOが2人続いて現在に至っている。ちなみに現CEOは女性である。なおバーテル氏は現在も会長として同社の経営に当たっている。

 非常に穏やかな人柄が印象的なバーテル社長だが、ドラッグストア業界の現状について質問すると、次のような厳しい感想を語った。



 「非常に残念なことは、ローカル、あるいはリージョナルなドラッグストアチェーンが、最近次々と大手ドラッグストアに買収されていることです。地域に根差した企業が大手の傘下になっていくのは寂しい限りです。何とか頑張って生き残って欲しいと思います。当社は、21歳の若い薬剤師だった私の祖父が創業して以来、地域の人々の健康で幸福な暮らしに貢献するため今日まで地道に経営を続けてきました。常に心掛けていたのは、清潔で親しみやすいドラッグストアであり続けることです。幸いにも当社はこれまで、シアトル都市圏のお客さまからの根強い支持を得て現在も堅実な経営を続けています」

 代表的な店舗も紹介されて、店長はじめスタッフに取材した。

 バーテル ドラッグの最大の特徴は、テーマカラーがレッドであることだ。

 ドラッグストアと言えば、ブルーのイメージをすぐ連想するが、アットホーム感が漂うレッドが基調色になっている。もう一つの特徴は、よく教育訓練された従業員の、笑顔を絶やさない温かみのあるサービスである。

 シアトルエリアでもドラッグストアの競争は非常に厳しい。

 だがその中にあってバーテル ドラッグが地域の人々に支持されている理由はこの親しみやすさと信頼である。



 それにしてもアメリカのドラッグストア業界は、いまだかつてなかった激変の時代を迎えている。

 大規模な同業ドラッグチェーンの相次ぐ買収、調剤薬運営管理会社や保健管理会社の買収などが連続しており、上位2社は企業規模を驚異的に巨大化させている。

 それに加えてウォルグリーンは、イギリスのブーツなどを傘下におさめるなどグローバルな展開を加速させている。ライバルのCVSヘルスも負けず劣らず巨大なM&Aを連続させている。

 こうした激変する競争環境の中でも、バーテル ドラッグは、デジタル戦略にも見事に対応しており、シアトルエリアの人々にとって、これからも健康を支え続ける貴重な存在として在り続けることだろう。

 (次号は、平和堂 夏原平和会長)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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