第30回 「チェーンストア理論の優等生」(薬王堂ホールディングス 西郷辰弘社長)

【週刊粧業2020年8月31日号14面にて掲載】

 東北6県で300店近いドラッグストアを展開する「薬王堂ホールディングス」は、チェーンストア理論の原理原則を徹底して追求する優等生型企業と言える。売上高も2020年2月期で念願の1000億円に到達する見込みだ。

 薬王堂の店舗コンセプトは、「小商圏 バラエティ型 コンビニエンス ドラッグストア」である。

 人口5000人の小商圏に、商品構成、レイアウトを徹底して標準化した売場面積300坪型ドラッグストアを、商圏を可能な限り隣接させてドミナント出店している。

 創業以来同社を率いる西郷辰弘社長は私のインタビューで中期戦略について次のように語る。

 「店舗の標準化は徹底して推進しています。売場面積は300坪を標準としてレイアウトもほぼ同じ形にしています。こうした標準化の徹底により、今後もできる限り経費率は18%台を維持していきます。商圏人口が5000人となれば、これまでのように食品などで安さを前面に打ち出して集客し、医薬品、化粧品で利益を確保するというやり方は通用しません。医薬品、化粧品以外でも、お客さまが必要とする品種をできる限り揃える必要があります。このため売れ筋を徹底して絞り込み、余ったスペースに新たな品種を導入していきます。これによってスーパーマーケット、ホームセンター、さらにコンビニエンスストアからもシェアを奪っていきます」

 売場面積300坪で年商3億円、荒利益率30%で利益が確保できる店づくりを進め、店舗数300店、売上高1000億円を達成することが中期計画の目標だった。だがそれを2020年2月期でほぼ達成した。

 「中期計画のさらに先の目標については、東北6県での商勢圏を固めた上で、他の地域にも順次ドミナントを構成して、売上高3000億円体制を築き上げたいと考えています。そのためには、300坪型フォーマットをさらに進化させていかねばなりません」

 こうした徹底したドミナント化を支えるインフラの一つが食品流通センターである。岩手県紫波郡矢巾町の本部近くに2016年、「食品ドライセンター」を日本アクセスに業務委託して本格稼働させ、店舗作業を大幅に軽減させている。

 医薬品、化粧品、日用品についてはPALTACに業務委託して「RDC東北」(岩手県花巻市)、「RDC宮城」(仙台市)が稼働している。

 「こうした物流ネットワークの整備により、従来からの通過型センターを含めて、店舗での補充時間の短縮が進んでいます。人手不足が深刻化している状況では、こうした物流ネットワークの整備は、店舗作業の効率化に大きく貢献しています」

 なお薬王堂はこうした徹底した合理化、効率化を追求する一方、岩手県盛岡市の「セルスペクト社」と提携して、セルフ健康チェックサービスの実証実験に取り組んでいる。

 血糖値、中性脂肪、コレステロールなど8項目を簡単に自己採血検査するもので、10分ほどで検査結果が出る。こうした地域の人々の健康を支える取り組みにも力を入れている。

 (次回は、ドロシー レーン マーケット ノーマン C.メインCEO)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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