第31回 「母が教える顧客サービスの徹底」(ドロシー レーン ノーマン C.メインCEO)

【週刊粧業2020年9月14日号6面にて掲載】

 アメリカ オハイオ州デイトンに有名なグルメ スーパーマーケット、「ドロシー レーン マーケット」がある。同社は現在、デイトンエリアに、オークウッド店、ワシントン スクエア店、スプリングボロ店の3店を展開している。年商は約87億円の規模である。

 同社のスタートは、デイトン市南部 ファーヒル アベニューのドロシー レーンに1948年、カルビン D.メインとフランク サカダが開いたフルーツ&ベジタブルショップである。通りの名前をそのまま店名にしている。

 同社はその後、メイン ファミリーによる家族経営で現在に至っている。とくにカルビンの妻、ベラがスーパーマーケット経営に特別の才能を発揮して、105歳で亡くなる直前の100歳まで社長として経営にあたった。

 カルビン、ベラ夫妻の息子、ノーマン C.メインは1967年から副社長兼CEOとして経営の最前線を指揮している。現在は彼の息子のカルビンが社長になって補佐している。

 私がデイトンにある同社本部を訪れたのは2001年5月だったが、ちょうど3号店のスプリングボロ店を建築中だった。同店は翌年オープンしている。

 メインCEOは、本店であるオークウッド店に隣接する本部で私のインタビューに丁寧に答えてくれた。人懐っこい笑顔がとくに印象的だった。

 「母は今日も、高齢にも関わらず、お店を見て回っています。その誠実な人柄がお客さまから信頼されています。

 『常に正しい行いをしなさい』が彼女の信念であり、それはそのまま当社の経営理念となっています」

 ドロシー レーンは、商品の品質への信頼はもちろんだが、カスタマー サービスに優れていることが最大の特徴である。

 各店には料理教室が併設されているほか、オリジナル料理のレシピもいろいろな方法により詳細に紹介されている。またFSP(フリーカゥント ショッパーズ プログラム)もこのエリアで初めて導入している。

 ロイヤリティ カードによるきめの細かなポイントサービスやディスカウントなどにより、固定客をがっちり繋ぎ止めている。

 「商品知識などは従業員教育で教え込むことができますが、お客さまに対するサービス精神だけは、その人の持って生まれた性質によります。このため当社では、従業員を採用する際、私の前で何人かのグループに分けて、フリーディスカッションさせているのです。これによってその人の性質をかなりの程度知ることができます。その結果選んだ人を私が最終面接して採用するかどうかを決めています」

 こうしたカスタマー サービスの徹底は、彼の母、ベラさんがこだわり続けたものである。

 それこそが、あの競争が激しいアメリカのスーパーマーケット業界にあって、創業以来72年の間も、地域の人々に愛され、親しまれてきた同社の最大の強みである。(次回は、いなげや 成瀬直人会長)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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