第33回 「過疎地にも敢えて出店」(サツドラホールディングス 冨山睦浩会長)

【週刊粧業2020年10月5日号5面にて掲載】

 サッポロドラッグストアー(現サツドラホールディングス)は2011年5月、初めての離島への出店となる「利尻店」をオープンした。利尻島西部の利尻町沓形(くつがた)に開設したもので、人口僅か5500人という小商圏への出店である。

 私は開店前日から現地に入り、開店当日のテープカットから取材した。当日は天候にも恵まれ、背景に見事な利尻富士がきれいに見えた。

 同社は北海道内を中心にドラッグストアをドミナント展開しているが、2009年から人口過疎な小商圏にも出店し始めた。小商圏タイプの1号店は、2009年にオープンした「浜頓別(はまとんべつ)店」(浜頓別町)で、人口4100人の過疎地への出店だった。

 こうした経験を経て利尻店は、売場面積261坪の規模で、3億円を超える年商を見込んでオープンした。

 冨山睦浩(とみやま むつひろ)社長(当時、現会長)は、開店のねらいについて次のように語っている。

 「島内には、調剤を扱う店を含めて3店の薬局があり、コンビニエンスストア(セイコーマート)も3店あります。しかし日常の生活必需品をまとめて買える店はこれまでありませんでした。このため当社は、とくにヘルスとフードに力を入れた店づくりに挑戦しました。高齢化、過疎化が進む典型的な地域ですが、生活者の買物の利便性を高めることでフォーマットとして確立させたいと考えています。この店が成功すれば、人口3000人程度の小さな商圏でも競合がなければ成立する可能性が出てきます」

 同社の創業者、冨山会長(72)は、根室市の漁師の家に生まれた。

 「市立病院でもあまりよくならなかった母親の病気が、近くの薬局の薬剤師による適切な処方のお蔭でよくなったことから、自分も将来、薬局をやりたいと思いました。そこで昭和医科大学薬学部を卒業して薬剤師の資格を取り、1972年に札幌市西区(現手稲区)のスーパーマーケット内のテナントとして15坪の薬局を開業しました。実はその1カ月前に結婚し、店では私が医薬品を、妻(光恵副社長)が化粧品を主として担当しました。サッポロドラッグストアーという店名は、『何とか札幌で一番の薬局になりたい』という思いから、創業当初から付けました」

 その後今日まで48年間、冨山夫婦による二人三脚で今日同社は、2021年5月期で、売上高1000億円、経常利益30億円をめざすまでの企業に成長発展した。2015年からは、長男の浩樹氏が社長としてリーダーシップを発揮している。

 浩樹社長は、「これまで当社は、極端に言えば1店ごとに違ったレイアウトや商品構成の店づくりを進めて来ました。現在は売場面積380坪と300坪の2つのパターンに標準化した『ゼネラルフォーマット』を新店、改装店を中心に展開しています。基本的なレイアウトや棚割を同一にして、オペレーションの効率化を進めています」と語る。

 なお彼はマーケティング戦略にも積極的に取り組んでおり、地域共通のポイントカード「EZOCA」の会員数は、道内世帯の50%を超える157万人(取材時時点)となっている。

(次回は、フジ 尾﨑英雄会長兼CEO)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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