第34回 「中四国で1兆円めざす」(フジ 尾﨑英雄会長兼CEO)

【週刊粧業2020年10月12日号6面にて掲載】

 愛媛県松山市を拠点とする中四国有数のチェーンストア「フジ」は2018年10月、「イオン」と資本業務提携した。

 この提携によりイオンは、フジの株式15%を取得する一方、フジは70億円を出資し、イオングループのスーパーマーケット、「マックスバリュ西日本」の株式の一部をイオンから取得した。

 最大のねらいは、西日本地区で売上高1兆円を超える最大のスーパーマーケットグループを形成することである。

 尾﨑英雄会長兼CEOは私とのインタビューで、イオンとの提携の経緯について次のように語っている。

 「イオンとの提携は、中四国の有力スーパーマーケットである『マルナカ』がイオングループ入りしたことで、同社との経営統合についてイオンと話し合ったことがきっかけでした。その後イオンが、全国のスーパーマーケットを地域ごとに再編成する新たな中期計画を発表したことで、その流れに乗って、マックスバリュ西日本を含めた、より大きなグループづくりをめざすことで合意したのです」

 尾崎会長は2006年7月、54歳で営業担当専務から同社6代目となる社長に昇格した。前の社長二人が相次いで急逝したこともあっての抜擢だった。背が高く、がっしりしたスポーツマンで水泳が得意だった。

 尾崎さんは期待通りの経営手腕を発揮した。2009年8月には、ユニー、イズミヤ、フジ3社による共同開発商品「スタイル ワン」を発売した。このUIF体制はいまも続いている。

 さらに2010年には、フジのドラッグストア子会社「メディコ・二十一」と同じく四国を地盤とする「レデイ薬局」との合併を実現させている。

 そして2015年10月に、ツルハホールディングスがTOBでレデイ薬局の株式を取得して、ツルハ51%、フジ49%の持株比率でツルハの連結子会社化した。

 そして創業50周年を経て2018年5月、尾﨑社長が代表取締役会長兼CEOに、山口晋専務が代表取締役社長兼COOにそれぞれ昇格する人事を決定した。

 尾﨑新会長は、「2017年9月の創業50周年を大きな節目と考えて社長交代を決断しました」と語る。

 もう一つ尾﨑さんの功績として挙げられるのは四国最大のSC「エミフルMASAKI」(愛媛県松前町)の開設である。

 松前町が大型商業施設の誘致を計画してイオンと競合になったが、当時開発担当だった尾崎さんが様々な障害を乗り越えてフジが担当することになった。

 2007年5月に着工し、2008年4月にオープンしている。敷地面積6万坪、延床面積4万2000坪、駐車場5000台の大規模施設で、「フジグラン松前」を核に204店の専門店で構成され、300億円を超える売上規模となっている。

 私は尾崎さんの案内で着工目前の敷地を見学させてもらったが、その広大さに驚いた。

 今後の戦略について尾﨑会長は、「最も力を入れているのは既存店のリニューアルです。店舗を徹底的に磨き上げます。

 また縁があればこれまで同様、地元スーパーマーケットのM&Aもビジネスチャンスの1つとして考えています」と語る。

 このほか松山、広島、福山、呉など中四国の主要都市にも物件があればスーパーマーケットを中心に出店していくことにしている。

 (次回はPALTAC 三木田國夫会長)
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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