第19回 個性を髪で表現伸びる中国セルフヘアカラー市場

【週刊粧業2020年10月26日11面にて掲載】

 オシャレな街になりつつある中国。その中国で近年伸びているのが「ヘアファッション」の中のセルフヘアカラーニーズだ。

 中国でも色とりどりの個性的なヘアカラーの消費者が街を彩っている。今回は、そんなセルフヘアカラーについてクチコミ分析を通じてみていこう。

 中国の調査会社iiMedia Researchの調べでは、ヘアカラー剤市場規模は2017年にはわずか50億元程度であったが、20年には182億元になると予想している。3年間で3倍以上の規模への成長が見込まれている。

 中国トレンドExpressでは、セルフヘアカラーの概要を理解するために、Weiboで簡易クチコミ調査を実施した。

 その結果を見ると、単純に「自己染髪」というキーワードでのクチコミは19年9月から20年8月までで7189件が見られた。

 このデータを見ると、20年に入って3月に一気にクチコミ件数が伸びている。

 これは明らかに新型コロナウイルスによる外出規制の影響によるものであると考えられる。

 長らく続く外出規制で気持ちも落ち込む中、気分転換の一つとして自宅でヘアカラーを試してみるといった行為が増えたと推測される。

 ただその後もヘアカラー、特に自分で染めるというニーズに関しては昨年以上の水準を保っている。

 ちなみに小紅書(RED)での同キーワードの累計ノート数は17万4868件と非常に多くの投稿がなされており、今後のセルフヘアカラーニーズの高まりを感じさせる。

 そんなセルフヘアカラーに対して消費者はどのような内容をつぶやいてるのか、Weibo上のつぶやきを見てみよう。

 セルフヘアカラーに関するクチコミで目立つのが「成功」「失敗」、また激しい失敗を意味する「翻車(もともとは車がひっくり返るの意)」といったキーワードだ。

 こうした「失敗」「成功」の基準は、「効果」というキーワードが含まれているように、「思い通りの色にならなかった」や「思ったより似合わなかった」といったニュアンスが含まれている。

 また、30位には「技能(テクニック)」というキーワードがランクインしているなど、ムラのないように染め上げる方法に関してのクチコミも多いことを示している。

 さらにキーワード「自己染髪」のクチコミのポジティブ・ネガティブ比率をみると、ニュートラル比率が低く、ポジティブとネガティブの双方のクチコミ比率が高い。

 このことは、カラーリングをした後、「うまくいった」や「失敗した」といったクチコミが多いことを示している。

 日本でもセルフブリーチやセルフヘアカラーの初心者向け動画をYouTubeで見かけるが、中国でもそれは同様だ。

 例えば抖音(TikTok中国本家版)では、ヘアカラーに関する動画が数多く投稿されているが、その中でもノウハウや効果が一発で分かる動画が多くのアクセスを集めている。

 Z世代などの若者が自身の個性の追求という意味合いでセルフヘアカラーを楽しむのと同時に、そうした世代以外でも未経験者が自身の髪の色を変えることを自宅で楽しむようになっていることも大きいと考えられる。

 一方で、このセグメントには消費者からの支持が高い中国国産ブランドが存在せず、人気ブランドを海外勢が占めている。日本ブランドが攻めるのであれば、中国ブランドが大挙して参入する前の今が良いのかもしれない。
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森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

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