【週刊粧業2020年12月14日10面にて掲載】
今年も行われた中国最大商戦であるW11(双十一・独身の日)。EC最大手「天猫(Tmall)」のオーダー総額が4982億元(約7兆9000億円)に達したこの商戦、そのスキンケア部門で台風の目となったブランドをクチコミ調査で見ていこう。
今年のW11スキンケア部門でトップをとったのはEstee Lauderであった。
同ブランドは傘下に「LA MER」や「M・A・C」があるが、それらを除いたブランド「Estee Lauder」でのオーダー総額を「24億元超」と発表した。2019年はLOREALにトップを奪われ3位に甘んじた雪辱を晴らした。
そのLOREALが今年は2位、Lancomeが3位となり、トップ3はお馴染みの顔ぶれだったが、今回台風の目となったのは韓国の「The history of Whoo/后」で、Olayを躱し、4位となった。
19年に8位となり初めてトップ10に入ったが、今年は一気に順位を上げ、トップ3に迫る勢いを見せた。
トレンドExpressと子会社・数慧光(上海)商務諮詢有限公司ではW11に関するクチコミ調査を行い、振り返りレポートを作成した。
そのレポートにおける微博のクチコミでも「W11×買った」キーワードの露出が昨年比で大きく伸びている。
このW11で「The history of Whoo/后」がとった作戦は、「一点突破」といえるものであった。同ブランドの「天気丹(Cheongidan Radiant Emulsion)7点セット」にプロモーションを集中投下している形跡が見えたのである。
中国の報道によると、「The history of Whoo/后」は予約開始の10月21日から10月24日までの間に135人のライバーを使い、305回のライブコマースを展開。結果として予約総額のうち83%をこうしたライブ経由で獲得したと伝えられている。
その中でも特に10月20日の夜から行われた、トップKOL「薇婭(viya)」のライブでの商品紹介が、全予約の7割を占めたようだ。
親会社のLGグループで中国事業を統括しているトップによる、いわゆる「CEOライブ」でも「天气丹」の売り込みに徹していた。
「The history of Whoo/后」は、今回のW11で実施したライブコマースの1/3を、5億元のオーダー額を突破した「天气丹」に投入したとも報じられている。
同ブランドおよび主力商品の月ごとのクチコミ件数調査を見ると、3月8日の「婦人節」、6月18日の「618」で徐々にクチコミ件数を高めつつ、W11の予約が開始された10月そして11月にはクチコミ件数を爆発的に増加させている。特に10月は主力の「天気丹」の件数がブランド名を上回るところまで積み重ねている。
こうした「多発信・商品集中」が効き、今回の成果となったことがうかがい知れる。
Estee Lauderなどの資金力に優れる欧米系は、複数のブランドに大量の資金を投下し、それぞれプロモーションを行う絨毯爆撃式が可能である。
それに対抗する手段としては、「商品集中」した上での「多チャネル露出」という戦略が有効といわれてきたが、今回の「The history of Whoo/后」の戦い方はそれを徹底させたものといえるだろう。
世界中のブランドがしのぎを削る巨大な市場の、もっとも苛烈な競争が行われる最大商戦で成果を上げるためには、こうした「思い切り」、そして「徹底する胆力」が必要なのかもしれない。