第24回 キレイになる中国男子その市場の行き先は?

【週刊粧業2021年5月31日12面にて掲載】

 世界的なジェンダーレスの潮流が、コスメ業界に新たな変化とビジネスチャンスをもたらしている。お隣の中国でもそうした影響が「メンズコスメ」市場の急拡大という形で顕在化している。

 インターネットの中国のオーディション番組やバラエティ番組を見ながらふと思う。

 「中国の男性も変わった」

 表現が難しいが、いわゆる「キレイ系男子」が増えたと感じる。

 テレビに登場する男性芸能人も、どこか中性的で、髪型だけではなく眉を整え、さらにメークもきちんとした男性芸能人が多く登場している。

 筆者が中国に滞在していた1990年代末から2010年代中頃まで、男性はどこかあか抜けない、素朴な雰囲気であった。

 女性がメーク、ファッションにこなれている中にあって、余計にそれが目立った記憶がある。

 元来、中国のジェンダー感は保守色が強かった。かつては行政管理対象になる「風紀の乱れ」にジェンダーレスの概念も含まれることが多く、そこに明確に線が引かれていることが良しとされた。

 しかし、時代は変わった。

 現在、中国のメンズコスメの市場規模に関して、公的な統計データは出ていない。ただ、複数の調査会社のレポートによると、2023年には200~500億元規模にまで成長するといわれている。

 トレンドExpressでは、そんな中国におけるメンズコスメの意識を知るため、Weiboのクチコミ簡易調査を行った。

 そこで興味深いのは、「男性コスメ」に関するクチコミのポジティブ、ネガティブ、ニュートラルの比率である。

 ポジティブ率が13.23%と比較的高い。変わってネガティブ率は4.09%と低くなっている。

 既に男性のコスメに関して、ポジティブに受け取られていることが分かる。「男性が化粧なんて!」という時代ではなくなっているのである。

 また、「メンズコスメ」というキーワードとともにクチコミされた商品として、「洗顔クリーム」などの基礎化粧品、そして、「ファンデーション」や「エアクッション」など肌を美しくみせる「ベースメイク」などが上位に挙がっていた。

 さらに、「男性×スキンケア」「男性×メイクアップ」、それぞれのクチコミ集計を行った。

 その結果、ともに「代言人(イメージキャラクター)」というワードが最も多く、コスメ業界における男性芸能人起用の流行を感じさせた。

 「男性×スキンケア」と「男性×メイクアップ」の双方で人気となったブランドは「アルマーニ」であった。同ブランドは中国市場でも「男性向けスキンケア」シリーズを投入しているほか、口紅などのメーク商品では男性芸能人をイメージキャラクターとして起用するなど、化粧品と男性を結び付けて市場開発を進めており、「男性化粧品といえばアルマーニ」というイメージができつつあるようだ。

 スキンケアおいては、ロレアルや男女兼用のスキンケアを売り出したHANS(韓束)などの名前が挙がっており、比較的早期にメンズスキンケアの展開を行ってきたブランドに人気が集まっているといえる。

 アイドルオーディション番組の隆盛など、ますますキレイ系男子が増加しそうな中国。中国男子の変化には今後も注目していきたい。
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森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

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