【週刊粧業2021年10月4日14面にて掲載】
高速で変化する中国のファッショントレンド。今、ある新領域のファッションアイテムに投資家たちが注目し、過熱し始めている。それは中国の女性たちの「瞳」である。
中国では今、「美瞳(mei tong)」ニーズがZ世代を中心に高まっている。
美瞳とは読んで字のごとく、「瞳」を美しく見せること。すなわち瞳の色を変えたり、大きく見せたりするカラーコンタクトレンズのことだ。
現在中国ではカラーコンタクトレンズ市場が消費者、投資家双方から注目を集めている。人気を示す現象の1つが、「完美日記(PerfectDiary)」のカラーコンタクトレンズ市場への本格参入だろう。
すでに中国国産メイクアップブランドとして確固たる地位を築いた同ブランドが、次なるターゲットとして選んだのがカラーコンタクトレンズ市場というのは、決して思い付きではなく、商機を嗅ぎ取ったからと考えられる。
実際に今年2月には、設立わずか3年程度の中国のスタートアップでカラーコンタクトレンズを手がけるMoodyが、総額3.8億元の資金調達を行っている。
中国トレンドExpress編集部ではその盛況ぶりを知るべく、「美瞳」に関してウェイボーのクチコミ簡易分析を実施した。
クチコミ件数は2021年から急増し、「618」商戦後もその勢いは持続していた。
さらに顕著なのは前出の新鋭ブランドMoodyである。
ウェイボーのクチコミ件数を見ると、2020年は2000件弱程度。ダブルイレブン時でも3000件を超えるレベルであった。
21年3月の資金調達後から、クチコミ件数の増加ペースが急激に上がる。
特に6月に入ると「618」商戦の勢いに乗って、一気に3万件を超えるまでに急拡大しているのである。
同ブランドはおそらく調達した資金をマーケティング(主にSNS、オンラインなど)に一気に投下し、その活動を活発化させたものと考えられる。
投資家からの調達資金をマーケティングおよび商品開発に集中投下し、市場を押さえにかかるというのは、「完美日記(PerfectDiary)」の成功以降、中国新鋭ブランドの常套手段となっている。
また、「美瞳」に関するクチコミキーワードを見ると、コンタクトレンズの様式や大きさ、含水量などを消費者は気にしている様子がうかがえる。
特に視力矯正用のコンタクトレンズ着用者は「瞳の乾燥」を感じることが多く、潤いのあるカラーコンタクトレンズを好む。15位に「保湿」とあるが、それも同じニーズによるものだろう。
興味深いのはランキングの半ば過ぎに「日本」というキーワードがあることである。
実は美瞳愛好家から日本のカラーコンタクトレンズは非常に人気が高いのである。その背景には、アニメコスプレや近年広がるJKファッションなどのジャパンPOPカルチャーの影響がある。
こうしたコスプレイヤー(中国ではcoser)やJK、ロリータファッションなどのサブカルファンにとって、カラーコンタクトレンズは無くてはならない必須アイテムなのである。
また、日本のコンタクトレンズは安全面や快適さにおいても評価が高い。ただし、医療機器扱いとなるコンタクトレンズは参入障壁が高く、中国で売られている商品の多くがソーシャルバイヤーなどのCtoCでの販売が多いというのが特徴にある。
海外進出を目論む日本のカラーコンタクトブランドにとっては、中国市場・消費者の需要をどのように獲得すべきか、一考に値するといえるだろう。