第37回 多用から簡潔型へ新たな中国のスキンケア意識

【週刊粧業2022年9月12日7面にて掲載】

 中国の消費者はスキンケアに特に熱心。多くのスキンケア商品が市場にあふれているが、昨今Weiboや小紅書で注目されているスキンケアキーワードが「精簡」である。これまでのスキンケアと何が違うのか、クチコミ調査とともに見ていこう。

 「精」とは肌質に合った化粧品や肌へのダメージの少ない化粧品を選択して使用すること。「簡」とはスキンケアのステップをより簡略化、シンプルなものにするということである。

 この精簡スキンケアという考え方自体は、2019年末ごろにKOLである「駱王宇(ルオ・ワンユー)」が、「不必要な化粧品を取り除いて、スキンケアのコストを乳液、クリーム、UVケアに集中させる」と述べたのが最初と言われている。

 その後、皮膚科の医師ブロガーなどが賛同し、徐々に「精簡スキンケア」の考え方が浸透した。

 現在では小紅書にも11万件もの関連投稿がなされており、「実はこの化粧品は必要なかった」「精簡スキンケアで使える化粧品ブランド」など、知識やノウハウが紹介されている。

 具体的にはこれまで一般的だった「洗顔、化粧水、リペア、エッセンス、乳液、アイクリーム/フェイスクリーム、UVクリーム」という7つのステップを「洗顔、保湿、UVケア」の3つに集約させるのが主流であるようだ。

 これまでの中国では、「より効果のあるもの」「肌に良い成分」を多く肌に取り込むために、それぞれの効果の高い化粧品をそろえ、使っていくのが定番だった。

 しかし、この精簡スキンケアでは「必要・不要」を分け、「不要なものは使わない」という逆方向の発想によって肌を整えようというのである。

 背景にあるのは、大半の中国女性の肌悩みである「敏感肌」「乾燥肌」といった悩みだ。オーガニック化粧品などに注目する「CleanBeauty」意識と共通する部分もある。

 トレンドExpressではこの「精簡スキンケア」がWeibo上でどのようにつぶやかれているのか、クチコミ簡易分析を行った。

 関連キーワードで最も多かったのはエスティローダーグループのスキンケアブランド「CLINIQUE」である。同ブランドは20年ごろより「精簡スキンケア」について公式SNSアカウントなどを通じて発信しており、「精簡スキンケア」の代表的なブランドとして認知されていると考えられる。

 また、「敏感肌」「オイルコントロール」「アンチエイジング」といったワードも上位に並んでおり、精簡スキンケアの考え方でこれらの肌悩みを解決したいと考える消費者の声が表れていると推測できる。こうした肌悩みに対応した精簡スキンケア商品が注目されることになりそうだ。

 また1つ注目しておきたいのが「林彦俊(リン・イェンジュン)」というキーワード。18年のオーディション番組「偶像練習生」で5位に入り、歌手、俳優として活躍している若手アイドルである。

 その彼が代言人となっているのがイギリスのスキンケアブランド「REN」(ユニリーバグループ傘下)で、有害添加物を使用していない「クリーンスキンケア」と「安心」や「安全」、そして環境にも優しい「エコ」をブランド概念として打ち出している。

 同ブランド自体は現時点ではまだ大きなムーブメントにはなっていないが、中国の精簡スキンケアの流れは、海外の「CleanBeauty」ブランドにも参入のチャンスを与えていると言えるだろう。
この記事のお問い合わせはこちら

森下 智史

株式会社NOVARCA 「中国トレンドExpress」編集長

高校卒業後、約10か月間日本で中国語を学ぶ。1998年2月~上海で学部および大学院(中国古代史)で学ぶ。 2005年に卒業後、上海で在留邦人向け情報誌の編集・ライターとして業務。 2012年に日系市場調査会社上海現地法人でマーケティングリサーチ(産業調査)業務に携わる。 2015年5月、17年間の中国生活に区切りをつけ、帰国。東京で日中間のビジネスコンサルティング業務を経て2018年1月にトレンドExpress(現在はNOVARCA)入社。現在に至る。

https://www.novarca.jp/

一覧に戻る
ホーム > 連載コラム > 第37回 多用から簡潔型へ新たな中国のスキンケア意識

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop