【週刊粧業2024年11月25日号2面にて掲載】
グリーンサプライチェーンにおける「製造」では、調達にも関わる部分でもあるが、製品中に含まれるプラスチック原料を考える必要がある。マイクロビーズなどが配合された化粧品や日用品の製品だ。このようなマイクロプラスチックになりうるプラスチック原料を使用することで、それらが海洋に流出すると、プラスチックパッケージそのものの流出よりも、早く海洋生物に危機が生じる。
マイクロプラスチックは、海のサンゴにも覆いかぶさることが報告されており、魚などの生物がプラスチックを餌として間違えることだけではなく、サンゴの周辺に住む生物も脅かされる(サンゴについては、過去のブルーカーボンの連載などを参照)。プラスチック原料を代替または排除することで、海洋生物の多様性保全につながる。表面的にはプラスチック容器のことだけが言及されがちではあるが、消費財業界でも国連の「Beat Plastic Pollution」を進めるにあたり、プラスチック原料の代替や排除は必要不可欠である。
また、製造の中には、バルク製造だけでなく、パッケージの製造も含まれる。プラスチック容器や包装については、海洋流出を防ぐ必要がある。現状では、非石油系プラスチックを削減・排除するだけでは、海の生物多様性保全にはつながらない(詳細は過去の連載を参照)。
プラスチックだけでなく、化粧品や日用品業界では、通常外箱に用いられる紙資源の持続可能な利用に取り組まなければならない。グローバルで過剰な開発により森林伐採が行われ、カーボン吸収の問題が危ぶまれている。グローバルで森林減少は進んでおり、沿岸部では、木材としても利用される、ブルーカーボンにも含まれるマングローブ林の伐採が深刻である。
このほかバルク製造においては、とくに化粧品や日用品などの化学製品によく含まれる、化学原料による環境汚染も考慮しなければならない。以前の連載でも述べた国連の「Beat Chemical Pollution」への取組となる。環境に有害なケミカルは、サンゴや貝類、その他の海洋生物に悪影響を及ぼす。特にサンゴは絶滅の危機に瀕している。製品によく含まれる環境に有害なケミカルには、まず紫外線吸収剤がある。
世界的にも環境に有害とされているため、いくつかの国でその配合が禁止されている、もしくは有害ケミカルを配合した製品のビーチなどでの使用が禁じられている。JSCFでも「UVケア製品のガイドライン」を発行済みであるが、“つくる責任”として日本企業でもそれらの有害ケミカルが含まれていないか、また含まれていた場合に今後どのような取り組みを行っていくかなど明示する必要がある。合わせて、工場から出る排水について、水質汚染を引き起こすような有害ケミカルが含まれていないかなども確認して対応する必要がある。
国内でも河川などが汚染され、野生生物の生息に影響がでることや、夜間工場の明かりが点灯していることで虫などの小動物が集まってしまい、周辺の畑や林の生態系が崩れてしまうといった報告もある。
長井美有紀
日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事
化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。
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