【週刊粧業2024年12月9日号8面にて掲載】
今回は商品リニューアルの注意点を取り上げてみた。というのも新たな美容成分などの発見が最近は相次いでおり、それらを取り入れた代表商品のリニューアルが頻繁になっている気がするためだ。
代表商品のリニューアルは、事業の行く末を左右するようなこともある。もちろん一番大切なことは、商品の中身(バルクの開発)だが、それだけではなく販売促進を担当する部門でも、ご愛用者様へのご案内から一般顧客への広告宣伝まで気を許すことはできない。
代表商品のリニューアルは業績に直結する。ブランドのコンセプト(お客様との約束)は「商品」で表現するしか方法がなく、代表商品はその役割を果たすエースなので、どんなに美しい言葉を駆使しても、お客様に旧商品をしのぐリニューアル品を提供し、歓迎されることが不可欠といえる。
弊社は42年前の創業時から化粧品ビジネスのサポートをしているので、多くの代表商品リニューアルに立ち会ってきた。その中で大成功のリニューアルもあれば、リニューアルをキッカケに大量のお客様が離脱されすぐに再リニューアルを余儀なくされたブランドもある。最近ではあまり過度な期待をせず、「すんなり受け入れられたらとりあえず成功!」のように、小さな変化を目標にしている会社もあるようだが、個人的にはもっと刺激的なチャレンジをして欲しいと思っている。そうすると市場全体が活性化されるのではないか?
さて様々なリニューアルに立ち会ってきた私たちだからこそ感じている、リニューアルの成功と失敗の差はどこにあるのか考えてみた。その差は、一言で表現すると「固定観念を持たずに、お客様の声をどれだけ取り入れているか?」ということに尽きると思う。例えば、リニューアルの前に、様々なタイプのお客様に十分なヒアリングを行い、ご意見に対して真摯に向き合い、課題解決に積極的に取り組んでいるかが重要だ。
これが十分に実行されている会社は大きな失敗は無いように思う。ただしヒアリングが不十分だったり、会社側の思い込みで突っ走ってしまったり、つまり企業目線を優先させて、お客様のベネフィットをないがしろにしてしまうようなリニューアルは成功したためしがないのではないか。つまり商品開発やリニューアルは、ロイヤル顧客や長年のご愛用者と一緒に行うことが最も安心できる方法といえる。
また2番手商品の開発にも同様のことがいえる。弊社が多く支援している通販化粧品会社では、強い代表商品(入口商品)が無ければ、そもそも新規顧客獲得もままならないので、各社ともユニークな代表商品が存在している。まずはメディアで受け入れられ認知度が高くないと初回客も引き付けられないので、個性的なユニークさが不可欠だ。これまであまり世の中に存在しなかったものをリリースすることで成功した会社も多い。
ただし1品の単品通販を続けても客単価(LTV)は大きく伸びないので、クロスセルしてもらえる2番手商品が必要になる訳だが、この商品開発は成功体験のある入口商品と同じ発想でユニークさだけを追求してもあまり成功しない。クロスセルする商品を作らなければならないので、ここでもすでに既存客になっているお客様の要望を丹念に聞く必要がある。これも「お客様と一緒に商品開発」をすべき一例だ。
もちろん入口商品と2番手商品には共通のコンセプトや美容の考え方が踏襲されていなければならない。つまり最初の1品はユニークさを押し出したプロダクトアウトでも成功するが、品揃えが進むにつれてお客様の声を聞くマーケットインの商品開発の方が、長い目で見ると成功確率が高いということになるのではないか。
鯉渕登志子
(株)フォー・レディー代表取締役
1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。
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