【週刊粧業2025年2月3日号2面にて掲載】
2025年がスタートしてすでに1カ月が過ぎて、アナリストの化粧品市況予測や経営者の年頭所感も出揃い、現実のビジネスも動き始めた。インバウンドが戻ってきたこともあるのか、悲観的な話題は少なかったように思う。
そんなに良いというわけではないが、「昨年並み」というのが多くの方々の見解のようだった。たぶん売上的な業績はそのような予測になるのだと思うが、私は、特に国内マーケットは、これから大きな変化があるのではないかと予測している。
昨年から今年への変化ではなく、もう少し長いレンジで見てみると、コロナ禍の前と今日の差についてである。この5~6年の間の変化はすごく大きく、単純に元に戻った訳ではないことは多くの人が認識していると思う。私は化粧品を購入するお客様が大きく変化するのではないかと思う。
国内マーケットで最大の人口を抱えて大きな購買意欲を示してくれた「団塊の世代とそれに続くポスト団塊の世代」は、コロナ禍の前は60代~70代前半で、化粧品購入の意欲もまだまだ高く、この業界に大きく貢献してくれた。ところが今年2025年には、この世代が70代後半に突入する。
そうすると美容よりも健康に対する関心が高くなり、場合によっては医療費負担の方が大きくなる。美容意識を高いままキープして、高額化粧品を買い続けてくれるお客様はごく一部の方々ということになるのではないか。私がお手伝いしている通販化粧品業界では、その傾向が顕著に表れている。
一方、次に人口ボリュームの大きい、団塊ジュニア世代がいよいよ50代に突入する。エイジング関連商品を中心に「大人用の化粧品のターゲット」として大いに期待できる層であり、各社ともメインターゲットの世代として50代を設定しているブランドは多い。
ところがこれまでの美容トレンドを振り返ると、この世代はなかなか大きなブームを牽引できていない。親の団塊世代とは大きく価値観やライフスタイル、美容意識も変化しているということが大きな要因と考えられる。この世代を親世代と同じように、一つの大きな塊としてとらえることは難しい。
例えば親世代の団塊の世代ならば、多くの女性が結婚・出産というライフステージを歩み、50代に突入して子供の教育費負担から解放されたら、そのお金は自分の美容資金に回すなどのパターン化された消費行動が見られたが、団塊ジュニア世代はそれが描きにくい。つまり同世代でも、立場や暮らし方、価値観や美容意識も全く異なり、嗜好も多様であるため、お客様を群としてとらえることができない。
それは親世代と子世代、それぞれの生きてきた時代背景や価値観の変化を考えると当然のことだ。この大きな世代交代に対して、我々の側が少し準備不足だった面もあるのではないか。企業側の世代交代と同じく、お客様も世代交代をしているということなのだと思う。
この世代交代のお陰で、化粧品マーケットは大きく変化している。
一つは商品の変化だ。親世代には当然だった「1ブランドでライン使い」などは通じない。今の50代は一つひとつ自分で吟味して自分に合った商品を選ぶので、ライン使いより自分で選んだ商品を、自分流に組み合わせて使用する。そのためアイテム選びにもこだわりがあり、なかなかブランドの推奨通りには購入してくれない。
もう一つは買い物行動の変化だ。子世代の化粧品の買い方は、親世代のように購入場所が固定化していない。専門店も使えば、EC通販も使い、ドラッグストアも使うというように、こちらもフリーハンドで選択する。そのため買い物行動はとても広い。価格に対するシビアな判断もスマホを使えば瞬時にできるので、自分がお得に買い物できる方法をすべて知っている。
このようにお客様の世代交代は、我々に大きな変革を迫っている。
鯉渕登志子
(株)フォー・レディー代表取締役
1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。
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