【週刊粧業2025年3月31日号2面にて掲載】
店舗販売でも通販でも「お客様の声を聞く」ことは、今やマーケティング戦略の最初にすべき課題となっている。多くの企業では、アンケートやデプスインタビュー(1対1の形式で深く聞く定性調査)、モニター調査などさまざまな手法でお客様の声を集めている。通販化粧品会社でも多くの会社がお客様の「お声」を集めている。
しかし集めたお声は、単純な改善要望なら精査して対策を講じることに活用できても、根本的なサービス改善や業務改善に活かしている会社はあまり多くないように思う。通販化粧品の販売は「お客様の声」を、すべての判断の基本にするべきであり、もっともっと「お客様の声」を活用する必要性を感じている。
弊社ではお客様のお声を聞く場合、ただ多くのお客様に聞くというだけではなく、まず初めにお客様と会社の関係性を分類することから始めている。つまりRFM表で、お客様を分類し、①初めて購入した新規客、②時々購入するライト客、③何度も購入しているロイヤル客、④離脱した休眠客等のようにいくつかの階層に区分する。さらに年代別や初回の購入ルート別、あるいは独自の会員ランク別等に細かく分類する場合もある。
次に、分類されたお客様ごとに、ディモグラフィックや美容意識のレベル、ライフスタイル、美容ニーズ、なぜこの商品を購入したか、購入に至る情報取得の方法、使用後の感想、他社との比較、価格評価など、きめ細かい内容を徹底的にヒアリングする。すると、グループごとにお客様の傾向や特徴が明確に出てくる。
この徹底調査の結果をもとにして、お客様との情報接点から、商品の購入、使用してみた感想、商品の評価等を、時系列に追いかけた「お客様の心の変化」を取り入れたカスタマージャーニーを作ってみる。具体的には購入する前の悩みや検索の状態、購入を決めた理由、初めて使用した感想、数日使用した後、数カ月経過した今、といった時間軸と、心の変化や行動がどのように変わるのか。お客様のお声を元に、評価の良し悪しを含めて、その動きの詳細を、お客様タイプごとに、お客様のインサイトに迫るモデルケースを明確にしていく。
これが明確になれば、どのタイミングでお客様にどんなことを伝えればよいのか、どんな施策を打てばいいのか、どのようなクリエイティブが必要なのか、つまりCRM施策の基本の骨組みが完成する。そのあとは必要な情報のコンテンツを考え、施策のアイデアを考えて、お客様への伝え方や見せ方を具体的に考えていく。お客様へは売り込むより先に、情報を提供するべきだ。適切な情報が先に届いていれば、ニーズのあるお客様は購入してくれるはずだ。まずは必要な情報を分かりやすく、見やすく提供するべきだ。
弊社の提案するお客様調査の結果を徹底的に取り入れて成功した事例は多い。
例えば、新規顧客獲得を主に女性誌で展開していた会社では、お客様調査でロイヤル客が「雑誌好き」という傾向が明確になった。そこで配布していた会報誌を女性誌のような構成に変えたところ、愛読者が多くなり、会報誌を中心に受注が増え、ロイヤル層の支持率が高くなった。
また、メーク下地を新聞広告で新規獲得している会社のお客様調査では、しっかりメークをするシニアのお客様が多いことがわかった。例えば日舞の先生や、フラダンスの会員など、メークの必要性があり、同時に活動的な人が多かった。そこで会報誌でさまざまなシーンで役立つメーク講座を掲載するようにしたところ、人気企画になり、モデル募集にもたくさんの応募が寄せられた。
このように、お客様のお声をしっかり聞き正しく理解すれば、お客様に合った施策が実行でき、ロイヤル客へと導くことができる。実行したら結果を細かく分析し、効果検証をする。それが当初の目標に達しない場合は、どこか悪かったのか、どうすれば改善するのか、別の施策を実施したり、クリエイティブを改良したりしながらPDCAサイクルを回していく。CRM設計は作ったらそれで終わりではなく、常にブラッシュアップしながら、自社にとって最適な施策を見つけていくことが重要になる。
今や化粧品業界は、多くの商品があふれ競争が激化している時代。多くの投資で得たお客様を、ひとりでも多くのロイヤル客にすることは企業成長のカギとなる。そのためにも、お客様の声を正しく聞くことが必要不可欠なのだと思う。
鯉渕登志子
(株)フォー・レディー代表取締役
1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。
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