【週刊粧業2025年3月31日号7面にて掲載】
地球の土地の約31%をカバーしていている森林。森林保全は、カーボン吸収の視点で気候変動対策のカギとなっている。
近年のグローバルキーワードに、「Deforestaion=森林伐採」がある。Deforestaionとは、人間による産業や開発のための無作為な伐採のことをいう。2024年7月22~26日は、国連FAO Forestryによる森林に関するシンポジウムが開催されており、森林保全や生物多様性、そしてこのDeforestaionなどが多く取り上げられている(7月23日執筆時点)。このシンポジウム開催に先駆け、グローバルでは改めて森林保全の大切さを言及している。
●森林は、生物多様性の保全、気候緩和、生態系機能保全に必要不可欠である
●世界の森林面積は、現在、推定産業革命前の約68%!(つまり40%近く過剰産業により減少している)
●森林は最大の陸上カーボンシンク。無傷の森林では、地上の森林カーボンの40%が吸収されている
●森林は、世界の製品需要に圧迫されている。農業の拡大、都市化とインフラ開発、生物多様性の喪失と生息地の断片化などへ導く
●地球上の陸上動植物の80%が森林に生息。そのうちの多くは、住処を破壊する森林伐採により生き残ることができない
このように、森林伐採のキーワードは、気候変動だけではなく、生物多様性保全にも深く関係している。
林業の視点では、木材や紙資材の持続可能な利用が求められる。特にグローバルで多く言われるのは、松についてだ。特に東南アジアでは、環境や生物多様性に反して行われている無作為な伐採が問題視されている。紙資源は、もちろん、化粧品や日用品産業では外箱などパッケージや紙製品などに使われる。消費者に向けて認証などを正しくアピールし、消費者に持続可能な利用や、正しい廃棄や再利用などを求めるのも企業責任のひとつである。
また、産業における森林過剰開発は、化粧品や日用品などの分野では、パーム油が代表例だ。現地の環境団体などでは、パーム油の利用撤廃を求める動きが非常に強い。これにより、パーム油使用をゼロにした製品も続々と出ている。その一方で、これまでパーム油にかわる代替品はなかった植物油脂に関して、化粧品大手資生堂がバイオベンチャーと手を組み、植物油脂の代替原料の開発を始めた。代替品模索についても、このようなイノベーションとの絡みも今後注目される。
これ以上、Deforestaion(無作為な森林伐採)にならないように、資源が海外であっても明確に確認や持続可能な利用が求められる。
長井美有紀
日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事
化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。
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