【週刊粧業2025年4月21日号10面にて掲載】
マーケティングができる人とできない人の決定的な違いとは何でしょうか。現場でよく見かける光景があります。「最近は●●が流行っているらしい」と誰かが言い、「そうだね、流行っているよね」で会話が終わる。“なぜ”流行っているのか? 背後にある消費者の無意識の欲求について考えず、言葉を右から左に流して終わってしまう。
表面的な現象や流行ワードを知っているだけの人はマーケターとして伸び悩みます。“なぜ”を深掘りし、そこにある消費者の無意識の欲求や価値観の変化に目を向けられるかどうかが、マーケティングができる人とできない人を分ける決定的な違いです。
例えば、TikTokやXの投稿、YouTubeサムネイルでよく見かける「多幸感メイク」の“なぜ”を深掘りしてみましょう。このワードは、なぜこれほどまでに増加してきたのでしょうか? その背景には、“幸福に見えること”自体が美しさの一部として求められるようになった価値観の変化があります。一時期ブームになった「垢抜けメイク」は、対義語として「芋っぽさ」「垢入り」といった言葉が使われていました。
しかし「多幸感メイク」の対義語は「不幸そう」。この2つには大きな違いがあります。“おしゃれに見せたい”から“幸せに見せたい”へ変化しているということです。ただトレンドに乗るよりも、人としてハッピーに満ち足りて機嫌よく見えることが重視されるようになったのです。2015年くらいから若年層の間で美のお手本とされていた「港区系」など、外見だけを追求するライフスタイルへの懐疑的見方が広がっていることも影響しています。
興味深いのは、この「多幸感」という言葉を最初に使い始めたのが、若者よりも年齢を重ねた人がターゲットの美STだったという点です。2018年の見出しに登場し、「若見せ」ではなく「華やぎ」や「明るさ」が重要視されるようになったことからきています。
「多幸感メイク」は時代背景・価値観の変化・心理的ニーズが交錯する中から生まれました。この傾向は、美容を超えて「メイクアップトップス」といった“着る美容”や、血色感のあるネイルや眼鏡フレームなど、アパレルアイテムにまで広がっています。
こんな風に「なぜこの言葉が今、響いているのか?」という問いを持つと、お客様の解像度が高まります。マーケティングとは、商品提案や広告手法を考える以前に、“人を深く理解すること”から始まる仕事です。背景について深く考えることを意識すると、マーケティングスキルは格段に上がります。
廣瀬知砂子
女性潮流研究所 所長 / 商品企画コンサルタント
実践をモットーとする化粧品コンサルタント 現場発想で生み出した独自の商品企画法やトレンド分析法で、大企業から中小企業まで多くのヒット商品を手がけている。
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