第18回 クリーンビューティーとポストSDGs(1)

 国連では、9月にグローバル・デジタル・コンパクトと将来世代に関する宣言が盛り込まれた「未来のための協定」が採択され、ポストSDGsを示唆している。未来のための協定は、平和と安全、持続可能な開発、気候変動、デジタル協力、人権、ジェンダー、若者および将来世代、グローバル・ガバナンスの変革など、広範囲の課題を対象としている。

 はじめに、未来のための協定の総括として、気候変動や生物多様性保全のための(先進国による)資金調達の中で、改めて、世界全体の気温上昇を産業革命以前の水準と比べて1.5℃に抑え、2050年までに排出量正味ゼロを実現するため、エネルギー分野において化石燃料から脱却する必要性を確認している。

 つまり、気候変動問題解決や生物多様性保全への投資が必要になるということであるが、一方で過剰な投資は避けようといった動きもCOP26(第26回気候変動枠組み条約締約国会議)からあり、トレードオフにならないよう、そしてウォッシュにならないよう、再確認が必要になってくる。

 AIやデジタル化がSDGs達成に必要というのは、すでに昨年からSDGsレポートなどの結果をもっていわれており、クリーンビューティーの分野でもすでに進んでいるところもある。国連レベルでは、様々なICT化を進めるともに、一歩進んだ議論としては、データガバナンスを国連の議題に載せるとともに、各国に対し、2030年までに具体的な行動をとるよう求めているとしている。

 こういった点を踏まえ、今回はクリーンビューティー分野において、どのようなことが考えられるかについて考察する。

 クリーンビューティー分野としてすでに行われている投資が、農業、ブルーカーボン関連(サンゴやマンブローブ林など)、森林保全などである。農業については、オーガニック農業を超えたRegenerative Aguriculture(リジェネラティブ農業=環境再生型農業)がある。リジェネラティブ農業で栽培された植物原料を使って化粧品原料にすることができる。

 リジェネラティブ農業はすでにネスレやパタゴニアなどのグローバル大手企業が進んでおり、また、海外のクリーンビューティーの分野では、2021年ごろから、ついに〝Farm to Bottle(ファーム・トゥ・ボトル=農地からボトルへ)”という概念ができ、イタリア老舗のオーガニックヘアケアブランド「Davines」が進めている。→(2)に続く。

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長井美有紀

日本サステナブル化粧品振興機構 代表理事

化粧品業界に長く、早くから「環境×化粧品」を提唱。業界・企業・一般に化粧品の環境・社会課題について解く。サステナブル美容の専門家としても活躍し、主に生物多様性と産業について研究。講演や執筆、大学での講義などで幅広く活躍。

https://sustainable-cosme.org/

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