第102回 日本vs.韓国 若年層の“エンゲージメント格差”

 「韓国コスメだから良い」という時代は終わり、いまや韓国コスメ同士の熾烈なサバイバル競争の時代に突入しています、という話は、これまでのコラムでも何度もお伝えしてきました。

 TikTokやInstagramなどSNSを中心としたバズのサイクルは非常に速く、話題になった商品でも、スウォッチ投稿やレビューが溢れる頃には“見飽きた感”が出てきてしまう。すると、消費者の関心はあっという間に次のブランドへと移っていきます。

 つまり今は、商品を出すだけでなく、継続的に“体験させる”“語らせる”“記憶に残す”といった接点づくりまでを含めた戦略が求められています。なかでも、リアルイベントを通じて、五感でブランドの世界観を体感してもらうことがより重要になっています。

 たとえば、デイジークが3月に表参道で開催したポップアップイベント「Pink Blossom」は、巨大な桜のモニュメントやピンク基調の空間演出により、視覚・嗅覚・触覚を通じて世界観を体感できる設計となっており、土日には1~2時間待ちの行列ができるほど大きな話題を呼びました。

 普段はカルティエなどのハイブランドが使用する一等地で、新興ブランドが数千万円規模のイベントを開催するのは、通常では考えにくい規格外の試みです。それを可能にしているのが、韓国政府による支援です。韓国では、産業通商資源部やKOTRA(韓国貿易投資振興公社)を中心に、海外展示会やポップアップの会場費、マーケティング費用などに対して最大50%補助する制度があります。一方、日本ブランドが同様の規模でポップアップを実施しようとすると、すべての費用を自社で負担する必要があり、実現は困難です。

 教え子の大学生からも「日本のブランドも、ロムアンドやフィーのように世界観を体験できるポップアップをやればいいのに」という声があがります。それを難しくしている背景には、国家レベルでの産業育成に対する姿勢の違いという消費者から見えにくい課題があり、それを説明しようとすると、どうしても言い訳のように聞こえてしまうのです。

 韓国ブランドは、世界観の発信を通じて若年層とのつながりを深め、ブランドへの共感を高めています。一方、日本ブランドは、同様の発信機会を得るための資金的・制度的ハードルが高く、十分なエンゲージメントを築くことが難しいのが現状です。このままでいいのでしょうか? 何かできることはないのでしょうか? このコラムを通じて皆さんと一緒に考えていけたらと思います。

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廣瀬知砂子

女性潮流研究所 所長 / 商品企画コンサルタント

実践をモットーとする化粧品コンサルタント 現場発想で生み出した独自の商品企画法やトレンド分析法で、大企業から中小企業まで多くのヒット商品を手がけている。

http://www.beautybrain.co.jp/

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