ブックタイトル化粧品・トイレタリーの専門誌C&T|2019.10(季刊No.181号)

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概要

化粧品・トイレタリーの専門誌C&T|2019.10(季刊No.181号)

C&T 2019-10 9Literacyおわりに4) 最後に「かゆみ」の研究について述べる。アトピー性皮膚炎患者にとってはそのような皮膚の損傷は痒みの悪化につながる。自然科学研究機構生理学研究所の望月秀紀特任教授は、男女18人に蚊に刺された腕の写真を見せる実験をして、痒みを感じて「掻きたい」欲求を発する脳内の仕組みを確認した。そのときの脳の活動を、磁気共鳴断層画像装置(fMRI)を使って調べた結果、中脳や線条体(掻きたいという欲求)といった報酬系と呼ばれる脳部位が強く反応することを、世界で初めて明らかにした(図4)。 具体的な信号のやりとりはわからないが、このつながりを弱めれば悪循環のアトピー性皮膚炎で掻くのを『止める』治療につながるかもしれない。 参考文献 1) https://sirabee.com/2016/04/27/114351/(2019年8月5日アクセス) 2) https://allergy72.jp/anaphylaxis/allergy.html(2019年8月5日アクセス) 3) https://www.seikyoonline.com/article/9264EA64B88263C99E5B74387A19187B(2019年8月5日アクセス) 4) http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2014/01/post-262.html(2019年8月5日アクセス)の使用は、皮膚が薄くなったり内出血をしたりといった副作用があるので、症状が治まってきたら徐々にステロイド外用薬の使用間隔を空けたりする。 最後に、ダニや花粉、ペットの毛などの環境アレルゲンが悪化因子であれば除去する。また、バランスの良い食生活を心掛け、特定の食物による悪化が確認されていない限りは特別な制限は必要ない。規則正しい生活で、十分な睡眠時間を確保する。適度な運動による発汗は、皮膚の保湿に良いとされているが、かいた汗は放置せずにシャワー浴やお湯を絞ったタオルで拭く。加えて、風邪をひいたり、とびひやヘルペスなどの感染症、ストレスもアトピー性皮膚炎の悪化に関係しているといわれており、持続的なストレスがあるときには対策を検討する。 2018年4月には、バイオ製剤である「デュピルマブ」が発売された。これは、「インターロイキン4」や「インターロイキン13」の働きをブロックする抗体製剤で、これまでの治療で症状がコントロールできなかった重症例で使われ、大きな効果を発揮している。また、再燃を繰り返す湿疹に対しては、図3に示す「プロアクティブ療法」が行われている。 これは、症状が出た時だけに外用する「リアクティブ療法」に対し、炎症が軽快して、一見、正常に見える状態でもしばらく外用を続ける治療だ。図4 痒いところを掻いて快感が生じているときに報酬系と呼ばれる脳部位(中脳や線条体)が活動4)図3 アトピー性皮膚炎の外用療法3)